親権とは「子どもに関する重要事項を決める権利」

そもそも共同親権とはなにか?

夫婦が離婚するときには、18歳未満の子どもについて「監護権」「親権」それぞれを父母のどちらが持つかを決める。

監護権を持つ側が、養育の実務担当者だ。子どもの衣食住、教育、医療などのすべてをケアする。「権」とはつくが義務に近い。一方、親権とは「子どもについての重要事項を決定する権利」だ。いまの日本では子育てを母親がメインで担うことが多く、離婚時には親権・監護権ともに母親が取得することが多い。父親が親権を持つケースは1割程度だ。

このまま共同親権が導入されれば、離婚後の監護権はどちらか一方のみのまま、しかし「親権は父母の両方が共同で持つ」ことが可能になる。すると、なにが起こるのか?

共同親権下なら「子に関する決定」で脅すDV加害者も?

離婚後共同親権では、「急迫の事情」(緊急手術など)以外の子どもの「日常の行為」については父母の両方が決定権を持つ。

だからこそ「日常」の範囲がどこまでなのかが、きわめて重要となる。4月2日の衆議院法務委員会で、弁護士でもある枝野幸男議員(立憲民主党)が「急迫の事情」と「日常の行為」について明らかにせよと法務省に迫ったが、回答はあいまいなまま、可決に至った。

世の中には円満な離婚だけでなく、DVや虐待から逃げるための離婚もある。それらのケースで共同親権になるとどうなるか。「○○の書類にサインをしてほしければ○○しろ」という加害者/被害者の関係が離婚後も続くかもしれない。

おぞましいことだが、事実として、加害者が養育費の支払いとひきかえに元配偶者に性行為を強要するケースはこれまでもあった。今後は養育費だけでなく「子どもに関するあらゆる許諾」が支配や脅しの材料になりかねない。

【図表3】配偶者間における犯罪の被害者の男女別割合
男女共同参画局「男女共同参画白書 令和元年版」より。内縁関係を含む。検挙件数は平成30年(2018)