「夫に苦労」には共感

私自身は、秋篠宮さまの「典型的な(その年代にありがちな)日本男児の振る舞い」に遭遇していらっしゃる紀子さまの姿を拝見し、紀子さまのご苦労を思って胸を痛めたり共感したりすることがある。

昨年5月に行われた、イギリスのチャールズ国王の戴冠式の際にも、紀子さまは着物を着ていらっしゃって速くは歩けないのに、秋篠宮はすたすたと急ぎ足で歩いていらっしゃった。飛行機のタラップで腕を組んで降りようとする紀子さまに対しても、気恥ずかしいのかなんとなくいつも不愛想である。以前など、旅先でスナップ写真を紀子さまに撮ってもらい、今度は秋篠宮さまが紀子さまを撮って差し上げるのかと思いきや、そのまま無視して歩きだされたことがあった。

皇室に入られても、一般庶民と同じように、ちょっと気が利かないところのある夫に苦労されているのだろうなと思うとき、紀子さまに共感や愛情を感じる。

求められているのは「完璧な姿」ではない

もちろんお立場上、「うちの夫は気が利かなくて」などと言うことはできないだろう。しかし、特に現代においては、国民の敬愛は、完璧よりもむしろ欠落や親しみやすさに向けられるものである。天皇御夫妻も愛子さまも、これまで大変な困難があったにもかかわらず、ひたむきに物事に向き合っていらっしゃる、その姿勢に国民は敬愛を惜しまないのだ。

4月1日から、宮内庁がインスタグラムで皇室の情報発信を始めた。まずは天皇皇后両陛下の活動に関する画像や動画の投稿などを行うとのことだが、今後はさらに情報発信が活発化するだろう。秋篠宮家も、ぜひ等身大の姿を見せてほしい。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授

1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人