日本大学の事件のように、軽い気持ちで大麻に手を出してしまうのは大学生だけではない。マトリ(厚生労働省麻薬取締部)で40年以上の経験を積み、現在は薬物被害者の救済に当たる瀬戸晴海さんは「中学生、高校生から50代の大人まで、スマホがあればSNSなどを通して簡単に違法ドラッグを買える現状がある。もはや親の『うちの子に限って……』という甘い見方は通用しない」という――。
「一社・国際麻薬情報フォーラム」副代表理事の瀬戸晴海さん
筆者撮影
「国際麻薬情報フォーラム」副代表理事の瀬戸晴海さん

大麻を売買して検挙された人は5年連続で5000人超え

近年、大麻により検挙された人数が急増している。警視庁「令和4年(2022)における組織犯罪の情勢」によれば、22年は5342人で、3年連続して5000人を超えている。薬物事犯全体での検挙数は近年横ばいだが、大麻事犯の増加が薬物事犯全体を押し上げており、その中心は30歳未満の若年層が中心だ。

日本大学アメリカンフットボール部の事件など、大学のスポーツ部を中心に大麻の蔓延がいわれる中、わが子を薬物から守るには、どうしたらよいのだろうか。マトリ(厚生労働省麻薬取締部)歴40年以上の「国際麻薬情報フォーラム」副代表理事の瀬戸晴海さんに、一般の親には想像もつかない「スマホで薬物が買える事情」について聞いた。

情報拡散効果があると若者が利用するX(旧Twitter)やInstagramには、ブロッコリー、イチゴ、虹、アイスなどの絵文字が並ぶ。「手押し、イチゴ」――これを見ただけではなんの意味か大人には分からない。実はこれ違法薬物の広告なのだが、投稿されたメッセージには、大麻もマリファナも覚せい剤などの薬物に関する文字は一切ない。

「これは規制薬物の隠語ですね。ブロッコリーは大麻を表し、虹はLSD。アイスは覚せい剤を意味します。トレンドがあって、絵文字は常に変化していて、Xなどの投稿からテレグラムというアプリに飛ぶようになっています。秘匿性の高いテレグラムは、サーバーの位置が分からず信号化されていて場所や発信人を特定できないのです」

元厚生労働省麻薬取締部部長の瀬戸さんが語る実態

こう話すのは『スマホで薬物を買う子どもたち』(新潮新書)の作者、瀬戸晴海氏だ。瀬戸さんは、元厚生労働省麻薬取締部部長で、薬物犯罪捜査に40年以上も携わってきた。

これまで薬物事件というと、どこか遠い世界の、反社(反社会)の出来事のように感じていた人も多いだろうが、「うちの子に限って」ではなく、今や「うちの子どもが危ない」時代に突入しているのだ。

今年に入り、日大アメフト部の寮から大麻が見つかり、12月1日現在、4人の書類送検・逮捕者を出している。また早稲田大学の相撲部でも大麻所持容疑で1年生の学生が逮捕された。大学生に蔓延する薬物事犯……。

そしてイベントで食べた大麻由来の成分が含まれていたグミでの相次ぐ救急搬送など、大学生を中心に20、30代の若者が狙われている。