三井住友海上あいおい生命は、病気になった場合の保障と併せ、健康維持、病気の早期発見、重症化や再発予防などをトータルで支援するサービス「MSAケア」を展開している。「私たちは保険を売る“だけ”の会社ではない」と言う社長の加治資朗氏に、MSAケアの理念や、同社が目指す将来像を聞いた。

保障の前と後のサポートを“ひとつながり”で届ける

三井住友海上あいおい生命の略称は、三井(M)住友(S)あいおい(A)の頭文字からMSA生命となるが、MSAケアは、病気を予防し早期発見する「M=みつける」、治療を支える保障の「S=ささえる」、病気の重症化や再発を予防する「A=あなたをまもる」も表している。

「病気になる前と後のサポートまでを“ひとつながり”で届けるサービスを」という構想は、加治氏が社長に就任する前、専務だった3年前から温めていたという。「私たちの本来業務は、保険に加入された方が病気になった時に、保険金をお支払いすること。しかし、『万人の願いは健康』です。そもそも病気にならずに健康で長生きすることが、お客さま、ご家族、そして私たちの望み。保険による保障と、保障前後のサービスを一体提供することで、お客さまの健康に貢献できないかと考えたのが始まりです」

そして、当時から提供を行っていた、介護や認知症に関する悩みや相談に答える「介護すこやかデスク」などのサービスを拡充。新たに、がんや生活習慣病のリスク検査などを追加し、2022年10月にMSAケアを立ち上げた。加治氏は、「関心の高い『がん』、そして、現代の大きな社会課題となっている『認知症・介護』を軸にラインアップを広げました」と振り返る。

今年6月には専用サイト「MSAケアWebサービス」も立ち上げるなど、さらに使い勝手を向上させた。メニューの充実も図っており、同社と東京大学大学院工学系研究科社会連携講座と共同開発した、アルゴリズムを活用した音声で軽度認知障害のリスク判定ができる「録るだけ認知機能チェック」など、最新テクノロジーを活用したサービスも複数盛り込まれている。「シリコンバレーにも人を派遣し、国内外の最新情報を集めながらサービス開発を進めました」という。

メニューは現在、21種類に上る。スマホなどのカメラを健康診断結果にかざすだけで健康年齢や三大疾病・八大疾病入院リスクなどが分かる「撮るだけ健康チェック+(プラス)」、自宅で本格的な血液検査ができる「ketsuken(ケツケン)」、脳血管疾患などの再発や重症化を予防するための「生活習慣改善支援プログラム」、手術や治療数などの多い病院のランキング情報が確認できる「手術数でわかるいい病院」などがある。今後はさらに、介護や医療負担の軽減につながるメニューを強化する予定だ。

病気の予防・早期発見から健康に関する相談、重症化・再発予防など、病気になる前と後のサポートを“ひとつながり”で届けるMSAケア。専用サイト「MSAケアWebサービス」は、24時間365日の利用が可能だ。

認知症・介護という社会課題の解決に貢献したい

「S=ささえる」に当たる、病気になった時のための保障商品も充実を図っている。加治氏は「25年には、高齢者の5人に1人が認知症になると予測されています。保険会社として、この大きな社会課題の解決に貢献する商品を提供しなくてはいけないと考えています」と力を込める。

「昔から『介護のMSA生命』といわれてきた」(加治氏)という同社では、12年に「終身介護保障特約」を発売するなど、比較的早い時期から介護分野の商品を展開してきた。21年には収入保障保険を改定し、保障範囲を、業界標準となっていた「要介護度2以上」から「要介護度1以上」に拡大。また、定年退職後も長く働く人が増えていることにも対応し、保険期間満了年齢を最長80歳から最長90歳に延長した。加治氏は「こうした保障範囲の拡大や保険期間満了年齢の延長は、各地の代理店を訪問した時に聞いた『お客さまの声』に対応したものです」と説明する。

加治資朗(かじ・しろう)
三井住友海上あいおい生命保険株式会社
代表取締役社長
1960年、福岡県生まれ。83年、大正海上火災保険入社。2016年、三井住友海上あいおい生命保険取締役専務執行役員を経て、21年4月より現職。

健康に不安のある人も加入しやすい引受基準緩和型の医療保険の開発や、資産形成型の変額保険などの販売も、代理店からの声から生まれている。

中でも資産形成型の保険は、以前の三井住友海上あいおい生命が持っていなかったジャンルの商品だが、同じMS&ADインシュアランスグループの三井住友海上プライマリー生命がこの分野を得意としていたため、共同で商品を開発。今年4月には、資産形成を行いながら万一の死亡・高度障害状態にも備えることができる変額保険(有期型)『しあわせつみたて』を発売した。

「私たちは既に、主力ブランド『&LIFE』の下で、『医療保険Aエースセレクト』『ガン保険Sスマートセレクト』『新総合収入保障』などの幅広い保障商品を取りそろえており、自信を持ってご提供していますが、近年はさらに、保障商品以外のメニューも充実してきています。グループ総合力を存分に発揮したメニューが整ってきたと言えます」と加治氏は話す。

私たちは保険を売る“だけ”の会社ではない

「すこやかな未来を保険でつくる」をスローガンに掲げ、22年に始まった中期経営計画は2年度目に入った。その中において、「MSAケアは『私たちは保険を売る“だけ”の会社ではない。お客さまの“笑顔で長生き”を応援する会社』を象徴するアイテムになりつつあります」と加治氏は強調する。

ただ、メニューは充実してきたが、活用については「まだまだ」だと加治氏。「もっとお客さまに知っていただき、その良さを体感して健康増進に役立ててほしい。MSAケアは今、活用フェーズに入っています」と話す。

「もちろん、利用件数などは定点観測していますが、それよりも大事にしているのは、お客さまからの感謝の声です。『MSAケアのおかげで病気を早期発見することができた』『家族が認知症になった時に相談に乗ってもらえて助かった』などの声を頂いていますが、このような体験価値を表すお客さまの声が、今後さらに集まってくることを目指しています」

保険業界を取り巻く環境は激変し、競争はさらに激しさを増している。そんな中、同社は少子高齢社会、就労期間延長や介護ニーズの高まりなどの社会変化に迅速に対応する商品開発と、誰もが願う「健康」という望みを支えるサービスで、未来を創り出そうとしている。「新たなニーズに対応し、販売代理店と力を合わせて、お客さまから感謝される会社をつくっていきたい」。加治氏の言葉は力強い。