シニアもいる多様性のある社会がヒトを生き残らせた

「シニア」は、いい教育者でもあります。教育の目的は、人を育てること。文化や知識・技術を継承し、社会を維持するためのルールを教えます。

これに加えて生物学的には、「多様性の実現」という目的もあります。機械のように同じような人間を作っても、変動する環境や社会情勢の中で、将来まで生き残っていくことは難しいのです。いくら有性生殖で遺伝的な多様性を確保しても、画一的な価値観や生き方を押しつけたら、意味がありません。歴史を見ると、その中心的な人物はそれこそ大河ドラマが作れるくらい個性的な人が多いです。常識を打ち破れる型破りな人が時代を変え、時として世の中を飛躍的に進歩させるのです。

小林 武彦(こばやし・たけひこ)
東京大学定量生命科学研究所教授(生命動態研究センター ゲノム再生研究分野)

1963年、神奈川県生まれ。東京大学定量生命科学研究所教授、日本学術会議会員。九州大学大学院修了(理学博士)、基礎生物学研究所、米国ロシュ分子生物学研究所、米国国立衛生研究所、国立遺伝学研究所を経て現職。日本遺伝学会会長、生物科学学会連合代表を歴任。著書に『生物はなぜ死ぬのか』『なぜヒトだけが老いるのか』(ともに講談社現代新書)、『寿命はなぜ決まっているのか 長生き遺伝子のヒミツ』(岩波ジュニア新書)などがある。