「そんな状況なら死にたいのも無理はない」と共感を示す

末木新『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』(ちくまプリマー新書)
末木新『「死にたい」と言われたら 自殺の心理学』(ちくまプリマー新書)

自殺への危機介入の際には、このように共感的に相手の話を聞くことが大事だということはよく言われることです。実際にやったことのある人から良く出る質問に、「『死にたい』と言われたことについても共感しなければならないのか? そんなことをして死に向けて背中を押すことにならないのか?」というものがあります。

このように感じるときには、もしかすると、共感することと、肯定することを混同しているかもしれません。大事なことは相手の言ったことを全て肯定して受け入れることではありません。「死にたい」と言われて、それを肯定する必要はありません(ただし、それを否定する必要もありません)。重要なことは、「死にたい」と感じる背景にある状況を理解し、そのような状況であれば「死にたい」と思うことも無理はないということに対して共感し、気持ちを分かち合うことです。

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末木 新(すえき・はじめ)
和光大学現代人間学部教授

1983年生まれ。東京大学大学院教育学研究科臨床心理学コース博士課程修了。博士(教育学)、公認心理師、臨床心理士。主な著書に『インターネットは自殺を防げるか――ウェブコミュニティの臨床心理学とその実践』(東京大学出版会、第31回電気通信普及財団賞受賞)、『自殺学入門――幸せな生と死とは何か』(金剛出版)、『公認心理師をめざす人のための臨床心理学入門』(大修館書店)など。