1970年代から体制を整え、環境への取り組みを推進
――注力してきた環境への取り組みを、さらに強化されていますね。
【斉藤】DNPグループは、行動規範の一つに「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げ、常に地球環境との共生を考えた事業活動を展開しています。1970年代には、環境に対応する専門的な体制をいち早く構築。以来、独自の環境マネジメントシステムによる環境負荷の低減や、環境配慮型の製品・サービス開発を推進してきました。
近年では、気候変動や生物多様性の損失、循環経済への移行が加速度的に進んでいます。こうした状況を踏まえ、2020年3月、サステナブルな社会の実現に向けたありたい姿として、「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定。「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」を目指し、温室効果ガス排出量の実質ゼロ化、資源の効率的な利用、生物多様性の保全など、積極的な取り組みを続けています。
また22年4月には、環境・社会・経済の中長期的なリスクを管理し、事業機会の把握や経営戦略への反映を担う組織として、既存のサステナビリティ関連組織を、代表取締役社長を委員長とする「サステナビリティ推進委員会」に再編しました。同年3月には、20年に制定した「DNPグループ環境方針」の改定も行っており、社員一人一人の環境意識をより高めながら、法令遵守はもちろん、サプライチェーン全体で環境を強く意識した活動を進めています。
――独自の取り組みなどについて教えてください。
【斉藤】自然共生社会構築のため、生物多様性に配慮した原材料調達や地域の生態系に配慮した緑地づくりを進めています。
前者の例としては、生態系への依存と影響が大きい「紙の調達」に関し、持続可能な森林資源の維持を目的に、12年にグループとしてのガイドラインを制定し、森林認証紙の積極的な使用やトレーサビリティの確保を強化しています。
また後者の例として、本社のある東京・市谷地区では、再開発計画の一環で「都市における新しい森づくり」を実施。武蔵野の雑木林をイメージし、関東近県の地域性在来種で構成した「市谷の杜」での緑地育成を進め、地域の方にも親しんでいただいています。これは生物多様性の保全に貢献するばかりでなく、社員のウェルビーイングにもつながり、企業の成長をより後押しする力にもなると考えています。
社会や暮らしの基盤となる地球環境の持続可能性を高める
――「環境フォト・コンテスト」の募集テーマに込めた想いと、前回の入賞作品についての感想をお聞かせください。
【斉藤】社会や暮らしを持続可能なものとするには、その基盤となる地球環境の持続可能性を高めることが欠かせません。なかでも「大気」の存在なくしては、どんな生物も生命の営みを続けることは不可能でしょう。そのあり方に改めて目を向けてほしいという想いを、募集テーマ「大気のうた」に込めています。
前回の優秀賞「雪上の星空」は、深い青の星空と地面を覆う雪の白が、それぞれの色を互いに投げ掛け合いながら、天と地が対話をしているかのような素晴らしい作品でした。佳作の「穀雨」は、冷たさも残る空気に降る雨と木々の緑、棚田に映る水の輝きのバランスが大変美しく、もう一方の佳作「神秘的な城砦」は、眺めていると神秘的な海底を漂っているかのような錯覚を覚えさせる作品でした。
――最後に読者へのメッセージをお願いします。
【斉藤】地球環境の持続可能性を高めていくためには、企業1社でできることは限られており、国内外の多くのステークホルダーとの「対話と協働」が欠かせません。DNPグループは長年、印刷事業に関わる中で写真の持つ力を強く認識してきました。また、多くのメディアやコンテンツで高品質のビジュアル表現を展開すると共に、写真プリント用の部材やサービスなど写真関連の事業に国内外で注力しています。こうした事業とも連動しながら写真の力を生かし、サステナブルな社会を実現する上でも、環境フォト・コンテストへの協賛は重要だと考えています。
自然と向き合うことの大切さは、コロナ禍を経ても変わるものではありません。現在の地球の姿を見つめ直し、大気がどのような「うた」を響かせているのか、五感で切り取った作品をお寄せいただきながら、持続可能なより良い社会の実現に向け、共に取り組みを進めていければ嬉しいですね。
●募集テーマ:大気のうた
●前回の入賞作品