「日はまた昇る」幻想が染みついた70年間

大正後期から昭和までの70年間を足早に振り返りましたが、この中に、日本の少子化対策が遅れてしまったその理由が秘められていることに気づいたでしょうか?

たぶん、優れた官僚たちは、歴史からの教訓をよく学んでいたのでしょう。そこから得られる示唆は、「少子化傾向は長く続かず、じき反転する」だったのではないでしょうか。

戦前期の少子化傾向は長く見ても1930~1940年の10年程度、終戦直後の少子化時期は第1次ベビーブーム世代最終年の1951年から1969年までの18年。いずれもその後、反動で多子化時代に戻っています。このサイクルを考えると、第2次ベビーブーム世代最終年である1974年から19年後、1993年くらいにはまた、多子化に向かうと考える為政者は多かったのではないでしょうか。こんな肌感覚の出目論だけでなく、第2次ベビーブーム世代が親になる2000年頃には多子化は起こる! という感覚が、歴史の教訓として悪戯をしていたのでしょう。

そして、多子化に転換する可能性のある中で、多産奨励をしたら、取り返しのつかない人口爆発が起こるという思いが、少子化対策を遅らせたのではないでしょうか。

海老原 嗣生(えびはら・つぐお)
雇用ジャーナリスト

1964年生まれ。大手メーカーを経て、リクルート人材センター(現リクルートエージェント)入社。広告制作、新規事業企画、人事制度設計などに携わった後、リクルートワークス研究所へ出向、「Works」編集長に。専門は、人材マネジメント、経営マネジメント論など。2008年に、HRコンサルティング会社、ニッチモを立ち上げ、 代表取締役に就任。リクルートエージェント社フェローとして、同社発行の人事・経営誌「HRmics」の編集長を務める。週刊「モーニング」(講談社)に連載され、ドラマ化もされた(テレビ朝日系)漫画、『エンゼルバンク』の“カリスマ転職代理人、海老沢康生”のモデル。ヒューマネージ顧問。著書に『雇用の常識「本当に見えるウソ」』、『面接の10分前、1日前、1週間前にやるべきこと』(ともにプレジデント社)、『学歴の耐えられない軽さ』『課長になったらクビにはならない』(ともに朝日新聞出版)、『「若者はかわいそう」論のウソ』(扶桑社新書)などがある。