人口7000人の島で暮らす
私は東京生まれの東京育ち。美大卒業後はイラストレーターとして食品パッケージのデザインやファッションカタログの挿絵など、商業的な美術に携わっていましたが、30歳ごろからファインアートと呼ばれる、いわゆる純粋芸術の世界に移行し、美術館で作品を発表したり、ギャラリーで展示をしたりといったことをしていました。
大きな転機になったのは34歳のとき。夫との出会いがきっかけで、船の上で生活することになりました。そのときは夫と船で世界中を旅しようとしていましたが、長女を授かったので、じゃあ子育てしよう、とハワイのモロカイ島という、人口7000人の小さな離島に上陸しました。そこで自分たちで家を建て、食物を育て、馬やにわとり、アヒルなどの動物を飼い始めました。その3年後に次女が生まれて、4人家族となり現在に至ります。
絵を描くことは家事と同列
私のアトリエは、自宅の一室です。一日何時間描くと決めているわけではなく、ふつうに暮らしているなかで「今、描くときなんだ」というひらめきが来たら、パッと描き始めます。そのひらめきは1カ月来ないときもあるし、翌日に来るときもあって、本当に何のルールもありません。描くときも、自然と描けるときだけ描いて、ちょっとでも疲れたり、ストレスを感じたりしたら、すぐにやめます。そして日常生活に戻り、掃除や料理、庭の手入れなどの作業を行う。私にとっては、絵を描くことは日常生活の作業と同列なのです。
ただ唯一、同列でないことは、絵を描くときは一人でないとダメということです。子どもたちにも小さい頃から、ママが描いているときは話しかけないでね、部屋に入って来ないでね、と言ってきました。自分が作品をつくるときの意識や精神状態がどういうものか分析できませんが、やはり日常の状態とは違うのだろうと思います。