マイホームは高額な買い物だけに失敗すると、その後の人生設計が狂いかねない。ファイナンシャルプランナーの高山一恵さんは「とくに20代、30代はライフスタイルが変わりすい時期。出口戦略もしっかり考えた上で購入を決断すべきです」という――。

※この連載「高山一恵のお金の細道」では、高山さんの元に寄せられた相談内容を基に、お金との付き合い方をレクチャーしていきます。相談者のプライバシーに考慮して、事実関係の一部を変更しています。あらかじめご了承ください。

カーテンを開けて朝日を浴びる女性
写真=iStock.com/show999
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20代、30代は結婚、出産、キャリアの転換など、ライフスタイルが大きく変わりやすい時期ですよね。私自身、この世代の時に結婚、出産、会社の立ち上げと、怒涛どとうの日々を過ごした経験があります。そんな、挑戦とゆらぎの多い時期に新築物件を買ったシングル女性が、数年のうちに家を手放す決意をするに至った顚末てんまつをお伝えします。

SNSのタイムラインに流れてきた不動産広告がきっかけに

医療関係で働く赤塚千恵さん(仮名/当時37歳)は、15年間交際している彼氏のいるシングル女性。新型コロナウイルスの影響で仕事は激務を極め、この数年、気の抜けない日々を過ごしてきました。

彼氏とは結婚の話が出たこともありましたが、なんとなく立ち消えになったまま月日が流れてしまい、赤塚さんも仕事の忙しさから自分の将来に向き合えずにいたと話します。

年収は600万円。コツコツしていた貯金が1000万円近くになった時、たまたまSNSのタイムラインに流れてきた不動産広告が目に留まりました。都心のワンルームで長らく一人暮らしをしていた赤塚さんは、窓の外から畑が見える郊外の新築マンションの広告が新鮮に見えたそうです。

ものの勢いで内覧を申し込んだ赤塚さん。埼玉県の郊外、急行の止まらない駅から徒歩20分の距離にできたそのマンションは、広々とした間取りが“ウリ”。新型コロナの影響でリモートワークが根付いてきた中、通勤の便より広さを重視した物件なのです。

内見で即決。住宅ローンの審査を申し込み

赤塚さんが狙いをつけた55平米で2LDKの間取りの部屋は、一人暮らしには十分すぎるほど。長い廊下やデッキチェアの置けるバルコニー、濃い緑の匂いや鳥のさえずり・虫の音が聞こえる環境は都会の賃貸アパートにはなかったもので、赤塚さんの胸は高鳴りました。

「夏は近くで行われる花火大会が見えるそうです。デッキチェアでビールを飲みながら花火なんて最高でしょうね」

営業の人の言葉は赤塚さんに明るい未来を想像させるには十分で、内見後すぐにローンの審査書類を銀行に提出していました。この新築物件、値段は3500万円。頭金として500万円を払い、3000万円を35年ローンで借りると、月の返済は約7万円。

彼女の収入と今のライフスタイルなら返済は問題なく、銀行の審査もするっとクリアし、内見からわずか1カ月半後、赤塚さんは人生初の自分の城を手に入れたのです。