経験豊富なリードコンサルタントを中心とし、企業の新規事業創出に不可欠なソリューションを提供するAlphaDrive。ニュービジネス立ち上げのプロフェッショナルである同社の支援対象はメーカー、金融機関から飲食業まで業種を問わず、2018年の創業からわずか5年で支援した上場企業は100社にも及ぶ。
創業時には「0から1を生み出す」インキュベーションフェーズを中心に支援していたAlphaDriveだが、シード段階を抜け出た新規事業の成長をバックアップするアクセラレーション支援を拡大するため、2023年にはアクセラレーションスタジオ「AlphaDrive AXL」(アルファドライブ・アクセル)を設立。同社でアクセラレーションフェーズのリードコンサルタントを務める、金子祐紀氏にお話を伺った。

「新規事業支援で日本を元気にする」という代表の覚悟に共鳴

――なぜ企業の新規事業創出支援という現在のポジションを選ばれたのですか。

金子 祐紀(かねこ・ゆうき)
AlphaDrive AXL リードコンサルタント
東芝でクラウドテレビや眼鏡型ウェアラブルデバイスなど様々な新規事業の立ち上げをしてきた連続社内起業家。2020年にエイベックスとの合弁会社であるコエステを設立し、執行役員に就任。2022年よりAlphaDriveに参画し、事業グロース/アクセラレーションの領域を中心とした事業開発支援に従事。経産省グローバルイノベーター育成プログラム「始動 Next Innovator」3期生。東京大学大学院協力研究員。

【金子】僕は大学院でAIの研究をしていたのですが、卒業して東芝に入社し、「録画の神」と呼ばれた片岡秀夫さんという方に誘っていただき、新規事業の道に踏み出しました。それから10年以上、クラウドテレビ、眼鏡型ウェアラブルデバイス、テキストを入力すればしゃべらせることができる音声合成技術を用いた声のプラットフォーム「コエステーション」など、新技術の事業化に取り組んできました。ところが僕は、すぐに「また何か新しいことをやりたい」と感じてしまう人間で、「支援する側に回れば、常に色んな新規事業に携われるだろう」と考え、AlphaDriveに転職しました。

――入社の決め手は何でしたか。

【金子】AlphaDrive創業者の麻生要一が、本気で「新規事業開発を通じて日本を元気にしたい、それがAlphaDriveならできる」という気持ちでやっていることが伝わってきたからです。実際、ほんの数年前まで存在しなかった会社が、今やトヨタ自動車、NTTドコモ、JR東日本など、日本の多くの大企業と取引しているのですから、着々とステップを進めていると言えますよね。

AlphaDriveでは今、創業当初の「0から1」のインキュベーションフェーズのサポートを中心としたスタイルから、新規事業の「1から10」への成長をサポートする、アクセラレーターとしての活動も積極的に展開していこうとしています。それが必要になったのは、インキュベーターとしての支援を数年間続けて、より大きな展開が見込める事業が続々と育ってきたためです。このためAlphaDrive内に、アクセラレーションフェーズ支援に特化した専門スタジオ「AlphaDrive AXL」も新設しました。

クライアントに余計なお金を使わせないのもリードコンサルタントの仕事

――ご自身はどんな役割を担っておられますか。

【金子】アクセラレーションフェーズに達した企業内新規事業のサポートです。多くは大企業が対象で、リードコンサルタントとしてクライアントの相談に乗り、必要に応じて手助けしていくのが僕の役割です。

事業をちゃんと成功させようと思ったら、人を育てなければ始まりません。そのためには、僕たちが全部やりますみたいなスタンスではだめで、走り方は教えますが、自分たちで走ってもらう必要があります。支援をする場合も、まずはメンタリング伴走をしながらクライアントチームが置かれた状況を確認し、必要と判断した支援を選定して提供していくというスタイルです。

たとえば「ローンチして商品を売り出し、WEB広告を打ったものの、なかなかリード(見込み客)が獲得できない」あるいは「CPA(顧客獲得単価)が高い」というような場合、AlphaDriveのパートナー人材プールからマーケティングのプロをCMO(マーケティング責任者)としてアサインし、クライアントチームと一緒にマーケティング戦略を作っていき、その戦略に従って施策を策定し実行していきます。

そして「リードは獲得できるようになったけれども、まだ成約率が低い」といった新たな問題が起きてきたら、今度はセールスのテコ入れとして、やはり必要なプロをコーディネイトし、CSO(セールス責任者)として送り込む、といった具合です。

アクセラレーションフェーズは商品化したアイデアを世に出していくフェーズなので、メンターもクライアントと一緒にローンチを喜び合うという、幸せな瞬間があります。

――新規事業創出に関して、日本企業にはどのような課題がありますか。

【金子】大企業におけるシード期からの事業化は、スタートアップとはまた違う困難さがあります。たとえばスタートアップの場合は、資金を出してくれるベンチャーキャピタルが1社見つかれば発進できますが、大企業の新規事業では10人の役員がいたら10人全員が頷かないとGOが出ないことが多いのです。

しかし10人全員が賛成するような事業の多くは、無難なものや準備に膨大な時間をかけてしまっていてすでに遅いものが多く、あまりうまくいきません。そこで、外部の人間を入れて、ステージゲートを設けてスピーディにチャレンジングな事業も進めていける仕組みにしていくことが効果的です。

新規事業は基本的に「多産多死」です。社内公募で100の案が上がってきても、1次審査、2次審査と通過するうちにどんどん数が減ってきて、実際に会社から予算をつけてもらってスタートラインに立つときには、ほんの2、3チームまで絞られます。

その絞られた数チームでも、成功するかどうかはわかりません。大企業の場合、新規事業に大きな予算が投入され、失敗が許されない雰囲気の下で事業開発が進められることがありますが、「この新規事業は経営陣の肝いりだから、絶対に成功させろ」と言っても無理なのです。

新規事業を成功させたかったら、まずは毎年100のアイデアが出るような環境をつくり、リーンスタートアップ、小さく始めて大きく育てることです。アイデアのブラッシュアップにしても、ペーパー段階でできることはできるだけそこで済ませ、使い勝手などモノの形になっていないとできない部分だけ試作するというぐらいで十分です。そのように、余計なところにお金や人材を割かないようにすることで、本当に必要な事業に、必要なフェーズでしっかり投資できるようにしていきます。クライアントに余計なお金を使わせないのもリードコンサルタントの仕事です。

あるいは「まずは顧客に聞こう」という姿勢は新規事業の基本ですが、実際にはなかなかできていないものです。多くの顧客と会うことで見込み市場全体を見通すことができ、難しい判断を迫られたときにも、全体の情勢を踏まえた上で自信を持ってどう対応するか決断できます。AlphaDriveが加わることによって、新規事業だけでなく既存の事業にも、そうした考え方が少しずつ広がってきたと感じています。

それがクライアント企業、ひいては日本を元気にすることにもつながると考えています。

スキルや経験以上に「新しいことに挑戦する」マインドが大事

――新規事業支援に必要なスキルや能力は何ですか。また、どのような人がふさわしいですか。

【金子】アクセラレーションフェーズのリードコンサルタントになるにはやはり事業立ち上げ経験が重要なので、責任を持って事業開発をやってきた人が第一候補です。だいたいみんな同じところで壁にぶつかるので、メンター自身に経験があると、「自分はここでこういう失敗をしたから、これはしない方がいい」といった、教科書には載っていないアドバイスができます。

ただこれからは、事業責任者ではなくコンサルティング的なことをやってきた人にもジョインしていただいて、AlphaDrive流の手法をしっかり学んだ上で支援に取り組んでいただきたいと考えています。また、リードコンサルタント以外にも、マーケティングやセールスのプロフェッショナル、技術の目利きができて、開発に適したベンダーを選定しハンドリングできるといった、テクノロジーに特化した機能人材にも来てほしいと思っています。一言で言えばCMO、CSO、CTOができる人たちですね。一方で、スキルや経験以上にマインドが大事です。我々支援者もクライアントチームと一緒に新しいことに挑戦していくので、新しいことが好きな人、ワクワクしながら取り組める人がいいですね。

新規事業は頻繁にいろいろな壁にぶつかります。そこで諦めてしまっても、別に誰からも文句は言われません。言い訳しようと思えばいくらでもできます。しかし、言い訳せずに全ての壁を乗り越えた先に、事業の成功はあります。「どんな手を使っても支援している事業を成功させてやる」というような、気概がある人に来てほしいと思っています。

新規事業担当者や起業家でなくても、事業創造の場に立ち会える「第3の選択肢」とは