※米国業界誌『Modern Materials Handling』の調査による。
書面の情報だけで仕事を進めることはない
今、物流センターや倉庫は一つの過渡期にあるといっていい。例えば、拡大するEコマースでは配送先が膨大になるため、商品を取り出したり、仕分けしたりする仕組みを根本から見直す必要がある。一方では、現場での作業が複雑になっているにもかかわらず、人手不足などでさらなる省力化を進めなければならない──。
「ニーズが高度化、多様化する中で、それぞれにとって最適・最良な物流システムを構築するのがマテハンのプロである私たちの役割です。お客さまからは、『ロボットを入れて自動化したい』『作業スピードをもっと上げたい』といった形でご相談を頂くことも多いため、具体的にどうしていくか、まずは現場を見せていただきます」
ダンボール箱一つにしても、必ず実物を確かめる。気温や湿度によって膨張していたり、強度が落ちていたりすることがあるからだ。
「わずかな誤差が後で取り返しのつかない事態を生むこともあるため、書面の情報だけで仕事を進めることはありません。あと、必ずチェックするのは作業する人の動きです。お客さま独自のやり方やルールは、行ってみないと分かりません。現場ではそれがルーティンになっており、説明がないことも多いため、小さな疑問を一つ一つ解消していきます。お客さまにとって当たり前になっていることの中に、課題解決の鍵があることも少なくないのです」
オンラインと対面の良さを使い分ける
全国に顧客を持つダイフクでは、コロナ禍以降オンラインによる商談や打ち合わせも増えている。
「議題が明確で結論の選択肢が絞られている打ち合わせならオンラインで十分です。けれど、発言のニュアンスをくみ取ったり、個別に真意を確認したりするのにはあまり向いていない。営業担当にとって大事なそうした仕事をするに当たっては、やはり対面でのコミュニケーションが必要となります」
作業エリアに上下二段で配置しているベルトコンベヤーの役割を入れ替えたい。そんな依頼があったとする。それ自体難しいことではないが、背景や理由を理解できていなければ言われたとおりに変更するだけで終わってしまう。
「『作業者の負荷軽減のため、商品を“下から上”に上げるのではなく、“上から下”に下ろすようにしたい』といったお客さまの意図をつかめれば、前工程、後工程も含めた提案が可能です。全体を俯瞰して、お客さまが本当にやりたいことを実現するのがダイフクの仕事であり、その技術を持っているのが私たちの強みだと思っています」
もう一つ、福田氏が対面でのやりとりを重視する場面がある。それは、顧客企業内に生じたギャップを解消したいときだ。お客さまの中で物流拠点の計画を担う「部署」と実際の作業を行っている「現場」では、視点の違いからどうしても意見が食い違うことがある。それを調整するのもダイフクの営業担当の大切な役割だという。
「例えば物流センター内の安全対策について、何がどこまで必要か、担当部署の方が詳細にイメージするのは簡単ではありません。そこで担当部署と現場双方の皆さんに当社の体験型総合展示場『日に新た館』にお集まりいただくことがあります。実際に機器を動かして具体的に説明すると、『確かに、これは必要だね』という話になるケースが多いです」
日々、全国を飛び回っている福田氏にとって出張は日常だ。オンライン全盛の時代、なぜ現場に足を運ぶのか。最後、改めてその理由を話してくれた。
「移動の時間がもったいない。そうした意見もあると思いますが、会って話さなければなかなか信頼関係は築けないし、顔を合わせているからこそできるちょっとした話の中にお客さまの本音が潜んでいたりする。それが当社のエンジニアにとって大きな意味を持つことがあるのです。私が本音や本心を引き出すことによって、関係する人たちが時間を有効に使えるなら、出張は決して無駄ではない。そう信じて、お客さまに会いに行っています」
Business trip for Innovation─会いに行く、が今日を変えていく─
- "人が集まる場所"には必ずその理由がある。そこで見つけた「面白い」が商品開発のヒントになる
- 現場だから見える課題、聞ける本音がある。そこにお客さまの求める最適解が隠れている
- 栽培のプロの勘や経験と蓄積してきた遺伝資源を掛け合わせることで世界が認める"種"ができる
- 予期せぬアイデアが現場には眠っている。生地に触れ、人と話す、これが欠かせない