経済成長が子どもに及ぼすプラスの影響

「イースターリンのパラドクス」以降、経済成長と幸福度の関係についてさまざまな分析が行われるようになってきましたが、その多くが成人した男女の幸福度を扱っていました。

背景にあったのはデータの制約です。多くのデータが大人にしか幸福度を調査していなかったのです。

しかし、近年では子どもの幸福度も調査したデータが徐々に増え、経済成長が子どもの幸福度に及ぼす影響についても分析されるようになっています。

経済成長は子どもの幸福度にプラスとマイナスの影響をもたらします。

プラスの影響について言えば、生活水準の向上が挙げられます。経済成長によって親の所得が上昇すれば、それに伴って子どもの衣食住の質も改善していきます。これは子どもの健康状態の向上にもつながるでしょう。

また、経済的に余裕ができれば、習い事やより高い教育を受ける機会も増えていきます。さらに、経済成長によって国全体が豊かになれば、貧困を原因とした犯罪に巻き込まれる割合も低下すると考えられます。

このように経済成長は子どもに多くの恩恵をもたらします。

幼年期から勉学に割く時間が増大

これに対して経済成長のマイナスの影響は、幼年期からの勉学に割く時間の増大です。

経済成長に伴い、より高度な技能を持った人材への需要が社会的に増加します。経済成長によって第1次・第2次産業から金融やITといったサービス業を中心とした第3次産業の比率が高まるため、高度な知識や思考力が求められるようになってきます。

近年、「数理・データサイエンス・AI」の重要性が高まっているように、明らかに以前よりも求められる技能が高くなっています。これらの技能は簡単に身に付くわけではなく、早い時期からさまざまな知識を積み上げていく必要があります。

本を見ている赤ちゃん
写真=iStock.com/yaoinlove
※写真はイメージです

この結果、幼少期からの継続的な学習が重要となり、勉学に割かれる時間が増大していくわけです。もしこの勉学に割かれる時間が多すぎる場合、子どものメンタルヘルスの悪化や幸福度の低下につながる恐れがあります。

このように、経済成長によって社会が発達したがゆえに、幼年期から勉学を継続的に行う必要が発生し、子どもたちの負担増加につながっている可能性があるのです。

以上、経済成長にはプラスの側面とマイナスの側面があるわけですが、どちらの影響が大きいのでしょうか。