「こうなりたい」の発想で、ワクワクする未来を手に入れる
――『LEAP THE FUTURE』の刊行の背景をお聞かせください。
MANA-Bizは、次の時代における「はたらく まなぶ くらす」はどうなっていくのかという問いに、10年間向き合ってきました。
情報発信サイトとしてこれまでに得た知見と、コクヨの経営理念である「be Unique.」に基づいた多様かつ独創的な発想を織り交ぜて、これからのワークスタイルを探ろうと考えたのが、本書を制作したそもそもの動機です。
この本では、少子高齢化や労働力人口の減少、環境問題など、さまざまな社会課題で1つのマイルストーンとされる2030年に焦点を当てました。
まずは、「2030年、こんな働き方をしていたい」という想いや具体的なアイデアを凝縮した未来のワークシーンを小説仕立てに表現。その背景となった、日本が抱える現状の課題を紐解くデータを分析し、そうした困難を乗り越えた先にある未来像を見識者とコクヨのコンサルタントが語り合う。
そして最後には「こんな働き方があってもいいじゃない。みなさんはどんな未来シーンを描きますか?」と、型破りでワクワクする未来の働き方を考えるワーク&スタイルアイデア図鑑と、盛りだくさんの要素を1冊にまとめています。
――編集の方針としては、どのようなことを心がけたのでしょうか。
「こうなるだろう」ではなく「こうなりたい」を考えるポジティブなスタンスを、常に意識しました。
コクヨのコンサルタントは、クライアントの働き方改革やオフィスデザインを数多く支援していますが、先行きが不透明な時代であることに加え、コロナ禍の影響もあって働き方の変化がより激しくなっている現在、今後に不安を感じているクライアントも少なくありません。
こうした悩みは企業のみならず、個々のビジネスパーソンにも共通していることでしょう。
経済の停滞や社会の閉塞感から、現在の延長線上に明るい未来は描けないかもしれません。しかし、「なるようになる」と漫然と過ごすのではなく、目指すゴールを見据えて「こうなりたい」だから「このように行動しよう」と前向きに取り組むことで、到達する未来のありようはいくらでも変えられるはずです。
そうした考えに基づき、現在の常識や既存の枠組みを跳び越える(leap)ことで、楽しい未来を手に入れようというメッセージを本全体にちりばめました。
例えば、ワーク&スタイルアイデア図鑑には、オフィスのコミュニケーションの1つとして、メタバース空間で上司のアバターを遠くに投げ飛ばし、その飛距離を競い合う部署間交流イベント「上司投げ」という手法を掲載しました。
未来の働き方を考えるにあたり、「これからは固定観念にとらわれない自由な発想が大切だ」とか「個人や部署の枠組みを超えた共創が必要だ」といったありきたりの提言だけではワクワクしません。実際に未来をつくっていくのは、私たち一人ひとりです。「自分だったらどうなりたいか?」を思考するうえで、これくらいの遊び心をもって楽しめれば、明るい未来を想像しやすいですし、アイデアの幅も拡がり、チャレンジ意欲も湧いてくるでしょう。
コクヨという会社自体、チャレンジするマインドにあふれています。その土壌をベースに、ポジティブな未来を読者のみなさんと一緒に考えたいという想いを込めました。
また、目指すべき未来は1つではないということも、本書の一貫したテーマです。ありたい姿は、所属する企業や業界、自分の立場やキャリアプランによっても違うでしょう。無数にある未来像の中から、どの道を選び、進んでいくかを決めるのは、私たち自身なのです。
そのためにも、未来が多層的なものであると認識することがまずは重要で、今の自分が立っているその場所から、たくさんの道が開けているのだと気づくことができれば、可能性も大きく拡がると考えています。
VUCAの時代だからこそ、幅広い知識で多角的な視野を!
――どんな方に読んでもらいたいですか。
基本的には、2030年ごろに組織の中核的存在として活躍している次世代リーダーを想定しています。ただ、それは役職的なリーダーに限りません。
これからの時代は、誰もが何かしらのリーダー的役割を担うような働き方が求められると考えています。一般社員も、自律的に仕事をしていくことや、自分で自分の働き方をデザインしていく姿勢が、さらに重視されてくるはずです。
働くうえではみんながリーダーであるとすれば、この本はすべてのビジネスパーソンを読者対象にしているといえるでしょう。
――本書の中で特に注目してほしいポイントはどこでしょうか。
すべてがポイントと言いたいところですが、あえて絞れば2つあります。1つは、日本における働き方の現在地を、実際のデータから紐解くとともに、それをもとにMANA-Biz編集部が考えた、私たちなりのオピニオンを紹介している第2章です。
目の前の仕事に注力するあまり視野が限定的になると、知識に偏りが生まれてしまい、新たな課題に直面したとき、限られた角度からしか物事を考えられなくなる恐れもあります。そもそも、課題や問題に気づくことすらできないかもしれません。
課題や目指すゴールを多角的に捉えるには、豊富な基礎知識を持っておく必要があります。幅広い知見があることで観察眼が養われますし、深い洞察も可能になるからです。
ただし、変化の激しい現代では、そうした知識もすぐに時代遅れになってしまうことを忘れてはいけません。常に知識をアップデートし続け、自分がいる社会の今を、正確かつ新鮮なファクトベースで知っておくことが求められます。
加えて大切なのは、本書も含め、書籍などに書かれている内容を鵜呑みにしないこと。情報としての正確性を判断し、どこまでが情報でどこからが著者の意見なのかを見極めることが重要になります。
そのため、本書ではできるだけ正確なデータの最新版を掲載するよう心がけていますし、データ情報を相互に関連づけた俯瞰的視点も入れています。さらにMANA-Biz編集部としての意見を明確に分けた形で載せています。
情報と意見を分けることで、情報を踏まえつつ意見も参考にしながら、読者のみなさんが自分なりの視点で思考することを、促したいとも考えました。
ですので、本書に書かれている編集部の意見を読みながら、「果たしてそうだろうか?」と疑問を持ち、「自分はこう考える」と、思考を巡らせていただけたら、それはとても嬉しいです。
――なるほど。もう1つの注目ポイントは?
第3章の見識者とコクヨのコンサルタント、計6組の対談です。
見識者のみなさんには各分野における最先端のお話を伺わせていただきましたが、非常に深い内容でありながら、決して難解ではありません。対話スタイルにしたのが功を奏したのかもしれませんが、重要なポイントを、非常にわかりやすく話していただきました。
多様なテーマを取り上げているので、すでに知っていることもあれば、これまで意識していなかったテーマもあるかもしれません。これらの新しいテーマとの出合いが、読者のみなさんの視座を高め、物事をより俯瞰的に捉える目を養うことにつながると思っています。
また、最初から最後まで一気に読み切らず、気になる部分から開いてみる……、そんな「つまみ食い」的な読み方でもかまいません。その中から、ワクワクできる未来を少しでもイメージしていただければ、それだけでも嬉しいです。
読者のみなさんと私たちとの相互作用で、本書はさらに進化する
――多くの要素が1冊にコンパクトに凝縮されているという印象です。企画当初にイメージしていた通りの出来栄えでしょうか。
いい意味で大きく化けたと思っています(笑)。当初思い描いていた構想に、コクヨのメンバーやプレジデント社の編集担当者が持つ多様な視点を交えたことで大きく膨らんでいき、さらに見識者とコンサルタントの対談でも化学反応が起きて、内容がいっそう充実していきました。
制作を進めていく過程で、私たち自身も予想以上に学びを深めることができ、考えてもいなかった「(未来は)こうなりたい」が次々と生まれました。まさに「書きながら進化していく」という制作プロセスでしたので、編集作業は本当に大変でした(笑)。
多くの人々の力が結集したことで、この本は成長しましたが、ここで終わりではありません。
本書を手に取ってくださったみなさんが、何らかの学びを得て成長する。それによって新しい価値が世の中に生まれ、その連鎖が未来をより良く動かす。そうした変化に私たちコクヨも触発され、さらなる発展を描いていく――これこそ、この本が持つ無限の可能性だと考えています。
つまり、本書を媒介にして、読者のみなさんと私たちの相互作用で新しい未来をつくっていく……。いってみれば、『LEAP THE FUTURE』はみなさんと「ワクワクする未来」を練り上げていくための起点となるもの。
多くの方に手に取っていただき、その数だけ「こうなりたい」という想いとアクションが生み出され、素晴らしい未来が実現されることを願っています。