今回のワールドトラベル特集では、2人の達人に快適出張術を聞いた。多様化するエアラインのサービス最前線を語るのは、航空ジャーナリストの中西克吉氏。ケータイジャーナリストの石川 温氏には、スマートフォンの効率的な海外利用法を。海外出張に役立つ必読情報満載です。
~エアライン編~
航空ジャーナリスト/中西克吉●なかにし・かつよし
航空会社の「サービス」を主なテーマとして、ビジネス誌や専門誌などで活動。近著に『ビジネスクラス USER'S GUIDE』(共著・監修/イカロス出版)など。
選択肢がさらに広がる
多様化するエアラインのサービス最前線
ANA系列とJAL系列のLCC(格安航空会社)が相次いで就航し、注目を集める一方、フルサービスキャリア(FSC)と呼ばれる、ビジネス客などが利用する既存の大手航空会社にも動きがある。大手各社は、LCCとの差別化をより鮮明にするため、持ち味である手厚いサービスを一段と強化している。
大手がサービス改善に力を注ぐのは、出張客の多いビジネスクラスだ。長距離路線のビジネスクラスでは、半個室仕様でフラットなベッドになるシートが主流になってきた。欧州路線では、直行便を運航する航空会社の半数がこのタイプのシートを搭載。北米路線でもフルフラットシートの導入が徐々に進んでいる。また、日本から中東乗り継ぎで欧州やアフリカ、さらに南米などへ多彩な路線を展開する中東の大手各社も、日本路線のほとんどの便にフルフラットシートを搭載する。まっすぐ横になって休めると、現地到着後も気力が充実するに違いない。
居住性にすぐれた次世代機材の導入も進む。ANAとJALは、気圧や湿度等の機内環境をより地上に近づけた、最新鋭のボーイング787を世界に先駆けて導入した。搭乗者からは、長旅の疲れが大きく軽減されたとの声も聞かれる。
総2階建ての超大型機のエアバスA380も、次世代の海外出張を実現する機材である。各社はA380の2階のほとんどをビジネスクラス専用とし、フラットシートをゆったりとした間隔で配置。かつ、多くの場合、専用のパブリックスペースを用意した。例えば大韓航空は2階全域をビジネスクラスとし、客室の後方に専用のバーラウンジを設定。エミレーツ航空が7月から成田/ドバイ線に導入したA380も、ビジネスクラス専用の広々としたバーラウンジを備える。飛行中に座席を離れ、同行者と打ち合わせをしたり、バーテンダー役の客室乗務員と談笑したりして過ごすこともできる。
ミールサービスも新機軸が盛りだくさん。多彩なコース料理もさることながら、JALは南魚沼産コシヒカリを炊き立てで提供。チーズのセレクションは、本場の欧州でも評価が高まっている国産に一新、またデザートのショコラはパリの名ショコラティエとのコラボ、といった具合だ。一般にメニューのアレンジもフレキシブル。前菜とサラダで軽く済ませたり、コース以外のアラカルトを組み合わせて頼むことも可能だ。長距離路線では、希望すれば好きなタイミングで食事をとることもできる。各自の都合や体調に合わせてパーソナルな応対が受けられることは、ビジネスパーソンには特にありがたい。