大切なのは地盤×建物の性能
6. 地盤・地質

耐震性は築5~10年の
ほうがレベルが高い

――皆さんが今、最も関心があるのはやはり防災面だと思います。耐震性などが評価されている住宅性能表示制度は、参考になるでしょうか。

長嶋 それまで各社が独自に様々な基準で表示していたものを、共通の基準で評価することになりましたから、そういう意味ではよいと思いますが、耐震性については少し残念な状況にあります。新築より築5~10年の物件のほうがレベルの高いことが多いのです。2000年の施行当時は耐震等級2や3の物件がたくさんありましたが、その後、購入者側が求めなかった結果なのでしょうか、今はほとんど耐震等級1が基準ですね。耐震等級1というのは、現在の建築基準法で定められたレベルです。これが耐震等級2になると病院・学校レベルで、1.25倍になります。

星野 少しわかりにくいですね。

長嶋 そう、わかりにくい。しかも、これは建物の性能をいっているだけなので、地盤が軟弱だと、どれほど建物を堅固にしても話になりません。地盤がもともと固いところは揺れないですよ。

※建築基準法レベルの建物の強さ:数百年に1度程度発生する地震力に対して倒壊・崩壊等しない程度。

7. 耐震性と築年数

星野 やはり地盤×建物ということですね。よく「大震災の時にすごく揺れて大変だったのではないか」と尋ねられるのですが、私は上層階に住んでいますが、全く物が落ちませんでした。後日、全戸点検をしたところ、中層階でクロスが一部剥がれた程度でした。多分、地盤が固いので揺れが抑えられたのでしょう。先日も区分所有者の方からこの近辺の地盤情報はどうなっているのかという質問をいただいたので、地盤情報は住民にわかりやすいかたちでもっと公表すべきだと思っています。

それと、うちには独自に地震リスクを研究されている居住者がいまして、「ここは津波は来ないが、地下鉄から水が襲ってくる恐れがある」と言われていました。これからの防災は、想定外は禁句と認識していますので、地下1階に設置している非常用発電装置に加えて、地上階にもLPG発電を建設しようと研究を始めています。

坂根 地震のほかにも大雨や洪水が何度もありましたよね。最近の免震構造のマンションのモデルルームでどういう質問が出るかというと、水が免震ピットの下に貯まるように掘ってあるのですが、もしそれも一杯になってアイソレータが浸かったらどうなるかと、そこまで聞いてきます。メーカーに問い合わせれば、拭いてくださいと言われるだけですけど(笑)。高級マンションを購入しようという方は、ありとあらゆることを考えています。

長嶋 地盤情報をどの程度開示していくのか、それをどのようにして資産性の評価に結びつけるのかということを、今ちょうど国土交通省でもんでいるところです。ですから、今年中にはそのあたりのガイドラインが出てきて、再来年にはそれを融資でどう優遇するかということになっていく。今はそういうタイミングです。