不動産にもセカンドオピニオンが必要
4. 営業マンのデメリットトーク
営業マンからは
デメリットを聞き出せ
――販売センターなどで、担当の営業マンと話をするときの留意点などがあればお聞かせください。
長嶋 物件のメリットはもちろん言ってくれますが、デメリットのほうまで率直に答えてくれるかどうかという点はチェックポイントだと思います。満点の物件などありませんから。
坂根 今おっしゃったことがひとつと、あとは自分が聞きたいことばかり先走って、営業マンの話を聞かないのはもったいないと思います。比較・検討するうえでは、ひとつひとつの性能について理解していなければなりません。与えられる情報をしっかり受け止めることが大事です。「それはいいから、私の質問に答えてくれ」というような流れになるのは避けたいところです。
星野 買うという行為は思いつきで選択するのではなく、いくつかの物件を比較検討して事前に評価して、意思決定するというプロセスを踏むものです。その際に、買う側が設定する評価の視点が偏っていることがよくあるので、「自分が気にしていることは、多くの中の1つにすぎない」ことを踏まえて、遠慮せずに第三者的な立場のアドバイザーに評価視点を聞いてみることが重要だと思います。買う側は、良い物件が出てくると「ここで決めないと他の人が買い付けてしまう」と、どうしても焦りますからね。
近年、医療等あらゆる世界で「セカンドオピニオン」の必要性が認識され始めています。特に住宅購入は一生に何度もある機会ではないし、家族全体にも影響を与えます。一方で営業マンはその物件をどうしても売りたいわけだから、買う側の関心項目には答えても、それ以外は教えてくれないことがあると思います。
長嶋 まさに、私どものさくら事務所は“不動産のセカンドオピニオン”というコンセプトでやっています。事務所にはたくさんの人――特に、契約直前の人が相談に来ます。皆さん、けっこう勉強していて、自分の中ではひと通り納得していて、あとは一応プロの識見を参考までに聞いておくかという人が多いですね。そこで私たちは、その物件がいいか悪いかは言いません。決断はご本人がすべきですから。ご本人の話と要望と物件を客観的に見て、決断する材料を提示するだけです。
住みたい町の「将来像」を盗み出せ
5. 南方向の都市計画
将来どういう計画があるのか
周辺環境は必ずチェック
――計画地周辺の環境については、どのような点を見ればよいでしよう。
坂根 高級マンションを求めている方であれば、関心があるのは商業や教育や医療などの施設ではなく、おそらく眺望は気に入ったが、将来何かが前面に建って、せっかくの景色が見られなくなるのでは、というようなことでしょう。資産価値に打撃を与えますから。将来の周辺環境の確認ということでは、都市計画法に基づく用途地域が決められていますので、検討している物件の周辺――おもに南方向はどの地域に定められているか、例えば商業地域であれば高い建物が建つ可能性があるということなどを把握しておく必要があります。それに先ほど長嶋さんがおっしゃいましたけど、計画地の地盤や地質などのハザード情報を仕入れておく。この2点がポイントだと思います。
長嶋 ハザード情報については、横浜市などはネット上ですべて調べられるほど情報開示が進んでいますし、東京でもご自分でかなりのところまで調べることができます。
さらにもう少し大きな動きを申し上げると、国は用途地域や都市計画そのものを変更しようとしています。今後、人口が長期的に減少していく中でコンパクトシティ化を進めていくときに、商業や住居などと用途を分けていると、それができなくなってしまう。このとき全体計画については、国は骨子となる方針だけを出して、最終的には各自治体で決めることになると思います。ですから、これからマンションを購入する場合は、まだ地図に載っていない、それぞれの市区町村が駅やその周辺をどのように構想しているか。まだ役所の中だけのレベルかもしれませんし、議会を通っているかもしれない。もっと進んでマスタープランが発表されているところもあるでしょう。そのあたりにも、探りを入れておきたいですね。
星野 そこは行政も様々な利害があるので情報をとるのはむずかしいかもしれませんが、都市計画のマスタープランが出ていたら、まずは見る。さらに、再開発などの話が出ていないか、開発申請は出ているか、という程度は聞けるのではないでしょうか。
坂根 資産価値は「街並み」と言いますね。街並みとは「道並み」なのだと思います。路線価という言葉があるように、道路というのはとても大切で、道幅や歩道など、その雰囲気が価格に影響を及ぼします。物件を検討しているときに道路が整備されるかどうか知らなかったというのは、少しばかりもったいないかもしれません。道路の整備情報はおおよそわかります。何年もかけて計画をしますから。
長嶋 物件をチェックするときは昼と夜、平日と休日、最低4回は見に行けといわれますが、実際にはなかなかそこまでできません。すると、見に行った日にはなかった現象が別の日に現れることがある。例えば平日は前面道路が大型車の通り道になっているとか、騒音や煙や臭気や……。うちが調査会社だということもありますが、私は必ず近隣の方にヒアリングをします。今は不用意に声をかけると不審者扱いされますけれど(笑)、ヒアリングで当日見られなかった現象を補足することができます。私たちもそこから様々な情報を得ています。