本当に良いマンションとは、居心地が良く、資産価値が下がりにくいマンションである。そんなマンションはどうすれば見つかるのか。情報はどうやって集めるか。モデルルームはどこを見たらよいのか。営業マンから話を聞き出すコツは?将来にわたる周辺環境の変化や、地盤情報、防災情報も見逃せない。業界をリードするおふたりの目利きと、タワーマンションの管理組合理事長にお集まりいただいて、ズバリ、外せないポイントをうかがった。

出席者
坂根 康裕(さかね・やすひろ)
住宅評論家。1987年株式会社リクルート入社。「住宅情報首都圏版」編集長を経て、2005年独立。オールアバウト「高級マンション」「高級賃貸マンション」ガイド、「SUUMO都心に住む」連載中。
公式サイト:
www.mh3.co.jp/
長嶋 修(ながしま・おさむ)
不動産コンサルタント。1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「株式会社さくら事務所」を設立。「中立な不動産コンサルタント」としてマイホーム購入・不動産投資など不動産購入ノウハウや、業界・政策への提言を行う。著書・メディア出演多数。

 

星野 芳昭(ほしの・よしあき)
白金タワー全体管理組合理事長。慶應義塾大学商学部卒業後、企業経営コンサルタントを経て、政府や自治体の政策評価や公共調達改革、人材開発に従事。2010年度より理事、11年度より理事長。

 

 


1. 居心地

居心地や快適さと資産価値が
一致する時代がくる

――震災後1年を経て、都心部の高額分譲マンションの市況や購入者の動向はどう変化したのか、お聞かせください。

坂根 都心部の7000万~9000万円のゾーンでいえば、これまで経験がないくらい売れています。場所により異なりますが、通常なら販売に半年程度はかかる30~40戸の物件が、概ね3カ月足らずで目処が立つというような状況です。

本来この価格帯はじっくりと見て、比較・検討して購入という印象だったのですが、どうもそうではない。今日は資産価値がテーマのひとつになると思いますが、震災後に都心部の販売価格に影響があったかというと、ほとんどありませんでした。資産性があることが、1年を経過して明らかになったわけです。それで、これまで消費を控えていた方々が動き出したのだと考えています。

かつてない売れ行きを見せる都心部の高級マンション

長嶋 ただ、売れ行きに相当のばらつきがありまして、どんな物件でもオーケーというわけではありません。価格と間取りだけが勝負の物件となると、意外に苦戦をしています。また、価格を相場に合わせるために安易に面積を圧縮すると、皆さん見抜く。このあたりの“選球眼”は、随分ついてきたなという感じはします。一方で、供給されるマンションの絶対量が少ないこともあります。今年は首都圏で4万戸前半といわれていますが、過去2年も少なくて、比較的供給が落ち着いているので、きちんとした物件がきちんと選ばれる市場になっていると思います。

――そうした状況下で、どのようなマンションを選ぶべきなのでしょう。

坂根 良い物件とは、基本的に「居心地が良い」ということだと思います。加えて、今、マイホームを探されている方々が一様に気にされるのは、資産価値が上がらないまでも下がりにくいということ。大切なのは、このふたつだと思います。私がセミナーなどをするときもこの2点からスタートするのですが、高級マンションというジャンルでいえば、マンションは土地と建物を分離できませんから、土地ならば利便性と環境が優れているところ、建物に関してはやはり上質でグレードの高いもの、シンプルにいうとそうなると思います。

居心地については、千差万別です。たとえば今、マンションで格段に進化している部分のひとつに開口部があります。従来は南側リビングの窓には大きな梁があるのが一般的でしたが、逆梁工法で上部の梁をなくした。あるいは、タワーマンションが一般化してくると、可能な限り眺望を良くしようと、床から天井までガラスを嵌め込める工法が開発されるなど、窓ひとつでも随分雰囲気が違ってきました。そのうえ、バルコニーがあるプランとないプランでは、また全然違います。これらは一概にどれがよいということではなくて、こうした建物の進化を把握して、自分はこれがいいと選択する、それが最終的に居心地の良さにつながってくると思います。

長嶋 今のお話を敷衍(ふえん)しますと、居心地や快適さと資産価値が一致してくるのがこれからの時代だと思います。「マンションは管理を買え」と言われてきましたが、言葉だけが流布していてよく意味がわからないところがありました。マンションを管理してくれるのは管理会社で、販売サイドもそう売ってきた節がありましたし、購入者側も何となくそう思っていた。築30年を超える物件が600万戸近くまで増え、マンションの老朽化問題は今後、社会的に大きなトピックになっていくと思います。当社では中古マンションの診断をずっとやってきましたが、築30年で全く問題のないものもあれば、あとは朽ちるのを待つだけというものもある。個体差がすごく出ています。

その意味で、マンションの資産性を考えるときには時間軸を延ばして、10年後、30年後、50年後にこのマンションはどんなポテンシャルを持っているか、あるいは購入後は自分が当事者となるので、そこに関与し意思決定する主体としてどの程度やるのか、ということを覚悟しておく必要があると思います。管理の形態でも、ホテルライクにサービスがすべてセットされているところもあれば、ある程度自分たちでコントロールしていくというスタイルでやっているところもあります。この点も含めて、自分にとっての快適さを選ぶ、資産性を選ぶということだと思います。マンションごとに特徴があるので、管理まで含めて納得して購入することが、居心地の良さにつながると思います。