「すこやかな未来を保険でつくる」をスローガンに掲げ、三井住友海上あいおい生命の新たな「中期経営計画」(2022-2025)が始まった。CSV(社会との共通価値創造)の推進と持続的成長をどのようなアプローチで両立させるのか。これからの社会において果たすべき役割とは──。同社取締役社長の加治資朗氏は「保障と保障前後のサービスを『一体』でご提供することで新しい保険の価値を創造していきたい」と語る。

——「中期経営計画」のポイントをお聞かせください。

【加治】新たな4年間の経営数値目標をKGI(重要目標達成指標)、KPI(重要業績評価指標)の2段階方式で設定しています。まずはその達成に向けて、しっかりとコミットしていきたいと考えています。

加治資朗(かじ・しろう)
三井住友海上あいおい生命保険株式会社
取締役社長
1960年生まれ。西南学院大学経済学部卒業後、83年に大正海上火災保険入社。同社東京企業本部企業第一部営業第三課長、三井住友海上火災保険執行役員関東甲信越本部長、三井住友海上あいおい生命保険取締役専務執行役員などを経て、2021年4月から現職。

今回の中期経営計画は、若手社員の意見も積極的に取り入れ、全社員で創り上げるものにしたいと考えていました。かねて若手には「自分の考えを持ってほしい、自ら行動して、自ら成果を出す社員になってもらいたい」と繰り返し話してきましたから、ミーティングの場で「社長、それは違うと思います」などとはっきりと主張する社員もいたことは、頼もしい限りでした。仕事のモチベーションの源は「お客さまからいただく感謝」だと皆が口をそろえます。私自身、このような定量化が難しい部分をより追求していくべきだと強く思っていました。現在、全国およそ100カ所の支社を順次訪問して中期経営計画の浸透を図り、「お客さまから感謝される会社になろうよ」と全社員に呼び掛けているところです。

——コロナ禍もあって難しい状況が続いたのではないでしょうか。

【加治】生命保険会社の存在意義とは何かを問い続けながら業務と向き合いました。「丁寧に対応してくれてうれしかった」「早く保険金をもらえてとても助かった」といった反響が続々と寄せられ勇気づけられる一方で、お問い合わせの殺到で電話がつながりにくくなるなど、ご不便をおかけした面もあったと思います。それだけ大きな社会的責任を負っていること、そして当社の商品・サービスに期待してくださる方が多いことを実感しています。

——具体的にどのような取り組みを。

【加治】中期経営計画では「すこやかな未来を保険でつくる」をスローガンとして打ち出し、全社員が「お客さまの『笑顔で長生き』を応援し、すこやかな未来を支える健康長寿サポーター」となることを目指しています。その基本戦略として、お客さまからいただいた感謝を「感動」のレベルまで引き上げていきます。

ヘルスケア領域に注力。感謝、感動、そして信頼へ

——サービスについて教えてください。

【加治】一つの例が、病気を予防する、あるいは早期発見をサポートする先進的な取り組みの展開です。がんの早期発見につなげるHIROTSUバイオサイエンスの一次スクリーニング検査「N-NOSE®(エヌノーズ)」や、ご自宅で受けられる認知機能チェック、ご家族向けのメンタルケアなどのメニューをそろえた「介護すこやかデスク」などを展開しています。「三井住友海上あいおい生命を選んで良かった」とおっしゃっていただけるよう、保障と保障前後のサービスが「一体」となった新しい保険の価値を創造していきたいと考えています。

感謝、感動を一つ一つ丁寧に紡いだ結果が、お客さまとの強固な「信頼」を生み出すのだと思います。信頼が当社を成長させる礎となり、より良い商品・サービス開発への投資につながり、お客さまへと還元されます。「感謝」「感動」「信頼」のサイクルをたゆまず回し続けることで、CSVの推進と持続的成長を両立できると考えています。その軸として、ヘルスケア領域での「CSV×DX」をさらに加速させていきます。

——三井住友海上あいおい生命はDXの活用に意欲的な印象です。

【加治】コロナ禍に伴う給付金のご請求が急増したことを受け、お客さまに24時間365日対応できる体制を整えようと、業界初のAIによる「自動音声応答サービス」を導入しました。ある女性社員の発案で、彼女自身がシステムを手掛ける事業者に直接アプローチし、非常に短期間で運用開始に至ったことが特徴です。当社だけの専売とするのではなく、業界標準として広く役立ててほしいとの姿勢で、同業他社や金融機関に対しても可能な限り協力しています。

従来の課題を解決する職域向けの非対面システムも

──これまでとは異なるコミュニケーションが求められているのですね。

【加治】当社の強みの一つは、MS&ADインシュアランス グループの中核損保2社が有する国内最大規模の販売網と顧客基盤です。生命保険に関する職域向けのサービスを、リモートワークの普及やペーパーレス化といった時代に即したものへと進化させることで、お客さまの利便性向上を図っています。

今年1月に提供を開始した「職域向けネット完結募集システム」は、対面を基本とする従来の職域募集における課題となっていた従業員への募集資料や申込書の配布、就業時間内に限定される保険の検討や加入手続きなどを解決するシステムです。お客さまご自身がスマホやタブレット、パソコンから専用サイトにアクセスし、サインレスで申し込み手続きを終えることができます。サービス提供開始からすぐに、大手の製造業の新入社員300人以上の方からお申し込みをいただくなど、ニーズの高さを実感しています。

——最後に改めてお聞きします。事業を通じてどのような価値を提供していきたいとお考えでしょうか。

【加治】万人が望むこと、それは「健康」だと考えます。私たち生命保険会社が問われているのは、病気の早期発見、重症化予防、健康増進など、保障前後のサービスまで含めていかにお客さまや世の中に貢献できるかという点だと思います。これから、当社の多様なサービスと商品をつなぎ、お客さまの体験価値向上に貢献できるヘルスケアサービスのプラットフォーム構築を本格化させていきますので、ぜひご期待ください。