全てのステークホルダーに貢献する「三方よし資本主義」を掲げ、本業を通じたSDGs(持続可能な開発目標)への寄与、業界に先駆けた脱炭素社会の実現を目指す伊藤忠商事。情報やサービスも含めた、世界の「あらゆる地域のあらゆるもの」をビジネスとして取り扱う同社の思いは、「地球のめぐみ」という募集テーマにも色濃く反映されている。

プラスチックリサイクルにも積極的に取り組む

——環境、サステナビリティ関連の活動について教えてください。

伊藤忠商事グループの企業理念は、創業者の経営哲学である売り手よし、買い手よし、世間よしの「三方よし」の精神です。自社の利益だけではなく、取引先、株主、社員、地域社会など、さまざまなステークホルダーの期待と信頼に応えるべく、本業を通じて社会課題の解決に取り組み、持続可能な社会に貢献したいと考えています。

2021年5月に公表した中期経営計画においても、基本方針の一つを「SDGsへの貢献・取組強化」と定めました。業界に先駆けた脱炭素社会の実現に向けてGHG(温室効果ガス)の排出量削減・オフセットに関する中長期目標を公表し、日本政府の目標である2050年までのGHG排出量実質ゼロの遵守と、2040年までのGHG排出量75%削減、そして残る25%に相当するGHGを上回る再エネ発電、水素、アンモニア、蓄電池などの削減貢献ビジネスの創出で「オフセットゼロ」を目指します。

——達成するための具体的なアプローチは。

「脱炭素社会を見据えた事業拡大」「循環型ビジネスの主導的展開」「バリューチェーン強靭きょうじん化による持続的成長」それぞれのSDGsに資する取り組みを加速させます。

「脱炭素社会を見据えた事業拡大」では、水素・アンモニア等による次世代燃料バリューチェーン構築、国内トップクラスの販売台数を誇るAI蓄電池による分散型電源プラットフォーム構築および家庭・地域の電力需給バランスの最適化、「CO2固定化技術」を活用した事業に向けたベンチャー企業との協業などを推進します。

「循環型ビジネスの主導的展開」は、顧客基盤を生かしたプラスチックリサイクル事業の主導的展開、欧州での知見に基づく廃棄物処理・発電ビジネスの事業拡大と業態変革が中心です。具体的には2020年11月、プラスチックごみの課題解決の手法として、世界初の試みである海洋ごみ由来の原料を配合したごみ袋を発表しました。2021年2月には買い物かごも開発し、コンビニエンスストアでの導入を広げているところです。2021年4月、SDGsに関する世の中のあらゆる取り組みを発信する拠点として伊藤忠本社横に開設した「ITOCHU SDGs STUDIO」内のエシカルコンビニでも、買い物かごとして使用しています。

「ITOCHU SDGs STUDIO」内のエシカルコンビニ。環境を配慮したユニークな商品が並ぶ。

そして「バリューチェーン強靭化による持続的成長」では、業界初の天然ゴムトレーサブルシステムを核とした商流全体の高付加価値化や、グループ企業であるファミリーマートのサプライチェーン最適化や物流効率化にも一体となって取り組み、生産性向上・フードロス削減に注力しています。安定調達の取り組みとして、天然ゴムやコーヒーでは、流通の透明化を図るトレーサビリティーの取り組みが進んでいます。原料調達の取引記録にいつでもアクセスできるスマートフォンアプリやウェブサイトを運用し、記録を書き換えることができないブロックチェーンの仕組みを用いているのが特徴です。

2022年優秀賞「生きる糧」門間直美さん
2022年佳作1「朝のごちそう」佐々木正春さん
2022年佳作2「山里の喜び」坂本和秀さん

企業の取り組みを広く知ってもらえる機会に

——環境フォト・コンテストへの参加を継続されている中で、どのようなことを感じていますか。

総合商社という業態は、B2Bのビジネスが多くを占めています。よって、第2回から参加している当社としても、このコンテストが、当社の取り組みなどを一般の方々に知っていただける貴重な場となっていると感じています。

当社の募集テーマは、生命活動のエネルギー源となる太陽や、雨、風、草花、そして動物たちなど、さまざまな素晴らしい「地球のめぐみ」に私たちが守られ、生かされていることを踏まえ、後世に受け継いでいきたいとの願いを込めて設定したものです。「環境フォト・コンテスト2022」の優秀賞に選定したのは、野生のキツネがサクラマスを狩る決定的瞬間が収められた「生きる糧」。その躍動感あふれる姿は、かわいらしさとともに、どこかユーモラスな雰囲気も感じました。産卵のために遡上そじょうしたサクラマスがキツネの命の糧となる、そんな自然界での“生命のつながり”が映し出され、巧みに「地球のめぐみ」が表現されています。

——今後について、メッセージをお願いします。

総合商社は取り扱う品目が多種多様で、あらゆるサプライチェーンに介在します。その影響力は大きく、セクターをまたいでサプライヤーに「責任ある調達」を働きかけることのできる、重要な役割と責任を担う立場です。影響が及ぶ範囲は自社の従業員だけにとどまりません。例えば、伊藤忠商事が調達するものを生産する工場や農園で万が一、人権や環境が脅かされるような問題が起こるようなリスクを想定し、未然に防げるように備えておくことが非常に重要です。当社の事業が調達先や取引先の従業員、消費者、また、それぞれが関わる地域社会にまで広く及んでいるということを改めて認識し、サステナブルな活動を続けていきます。