一人一人の工夫によって、森の多様な「力」が表現されている
——王子グループといえば「森」に関わる募集テーマですね。
【広報IR部】木材は私たちの祖業である製紙の原料でもあります。自然環境と密接に関係した事業を行う王子グループにとって、美しい自然と資源を次の世代に残していくことは重要なテーマ。環境フォト・コンテストは、そうした思いを皆さんと共有できる貴重な場だと考えました。
王子グループでは国内外に日本企業で最大となる約58万haの社有林を保有しており、そこには無数の動植物が生息しています。2021年10月、私たちが社有林に住む動物をテーマにした撮影で北海道の猿払、湧別、留辺蘂の社有林を巡った際にも、運が味方してくれたのか、ヒグマ、シカ、タンチョウヅルなどの姿を目撃することができ、森が貴重な命を育んでいることを強く感じました。当社では、そうしたかけがえのない森の役割や重要性を伝えるべく、一貫して「森」をキーワードとする募集テーマを設定しています。
——「環境フォト・コンテスト2022」以降の募集テーマは「森の力で未来を変える」。
【広報IR部】社会が森に期待する役割は、時代が変化するにつれて多様化しています。かつては森と言えば資源の供給地としての側面が中心でしたが、環境問題や自然災害が深刻化するにつれて、生物多様性の確保、水源涵養、国土や生活環境の保全といった機能が注目を集めるようになり、近年は気候変動の観点から、CO2の吸収という面でも脚光を浴びています。こうした多様な力を持つ森を守り、次の世代に引き継ぐことで、地球の未来を変えていきたい。そんな思いから設定した「森の力で未来を変える」にも、多数の力作をご応募いただきました。
優秀賞「森に遊ぶ」は、緑の中で無邪気に戯れる2頭の子グマの姿が、ほほ笑ましい写真として描かれています。健全な森は多くの生物を育み、人間との共生も可能にしてくれるはず。そんなことを思い起こさせる一枚です。また、佳作「森と未来に光を」では手入れの行き届いた森に光が降り注ぐ様子がこれからの森の成長を感じさせ、光を放つ生物の光跡を北極星と共に捉えた佳作「光の饗宴」では、脈々と受け継がれていく森の生命力が幻想的に表現されていました。「環境フォト・コンテスト2023」でも、森の力が明るい未来につながる、さらにイメージを膨らませた作品が集まることを期待しています。
創業150周年を目前にして森に立ち返る
——環境に対する考え方、取り組みを教えてください。
【広報IR部】王子グループでは、「環境・社会との共生」を経営理念の一つとして、国内外の広大な社有林の多面的な活用、製造現場における環境負荷低減策の追求などにより、持続可能な社会への貢献を目指しています。2020年には、2050年に温室効果ガスの実質的な排出をゼロとする「ネット・ゼロ・カーボン」を目標とした「環境ビジョン2050」を制定。あわせてマイルストーンとしての「環境行動目標2030」も公表しました。
「環境行動目標2030」では、温室効果ガスの排出量を2018年度比で70%以上削減すること、生物多様性の維持保全などを目標として掲げています。温室効果ガス排出量削減については、省エネルギーと再生可能エネルギーの利用率向上による排出量を削減した上で、国内外での森林面積の拡大や早生樹の植林によってCO2の吸収を促進するなど、各項目に具体的な行動内容を定め、取り組みを進めています。
——生物多様性の維持については、どのような施策を。
【広報IR部】国内外の約58万haの社有林は、主に環境に配慮した木材生産を主目的とする生産林約45万haと、生物多様性や流域保全を目的とした環境保全林約13万haに分かれています。環境保全林では、北海道猿払村のイトウ、高知県四万十町のヤイロチョウ、ブラジルのムトゥンやニュージーランドのキウイなど、国内外で希少種の保護活動を行っています。
——今後の活動の抱負をお願いします。
【広報IR部】環境保全は、息の長い取り組みです。森づくりは何十年も先を見据えて植樹し、日々の管理・保全という地道な活動を重ねます。社有林を訪れた際、若い苗木が一面に植えられた山の斜面を見て、改めてそのことを実感しました。
当社では、1873年の創業時から森の育成・保全をはじめとする活動に力を尽くしてきました。創業150周年を2023年に控え、私たちは「森」に立ち返ります。持続可能な森づくりや環境関連製品の開発強化に加えて、ステークホルダーの皆さんとのコミュニケーションの場として2022年10月、本社1階を改装。森を思わせるスペースとして整備します。いつか、社有林の一部を写真愛好家の方々に開放し、そこで撮影いただくような機会を設けたいとも考えています。実現した折には、ぜひご参加いただければうれしいですね。