大日精化工業は1931年の創業以来、色材や機能性素材などを通じて社会に彩りと利便性を提供してきた。行動指針により「未来は子供たちのもの」と考える同社は、1994年の第1回環境フォト・コンテストから参加。「地球上の美しい色彩」を後世に継承する重要性を発信するとともに、環境負荷低減の取り組みを着実に進めている。

環境と色彩に関する新たな視点の提示に期待

——環境フォト・コンテストを通じてどんなメッセージを送り続けてきたのでしょうか。

大日精化工業株式会社 広報本部 部長 田邉学さん

【広報本部】当社は顔料を祖業とする企業グループの社会貢献として、景観やまちづくりにおける色彩の在り方を提言する環境色彩活動に取り組んできました。景観は、地域固有の自然や歴史、文化などを背景に、人々の営みや記憶、その場所に寄せる想いなどが相まって創出されるものです。有名な景勝地ばかりでなく、日常の暮らしをさりげなく彩る色彩の美しさや楽しさなどを再認識し、「色のある世界の豊かさ」を応募者や読者の皆さんと共有したいと考えています。

当初は皆さんにとってなじみのなかった「環境色彩」という言葉も、毎回継続して応募してくださる方々の存在が後押しとなって、広く認知されるようになったのではないでしょうか。「環境フォト・コンテスト2022」の入選作も、何百体もの色鮮やかなてるてる坊主が目を引く優秀賞「コロナ終息祈願」、青空と色とりどりの空き缶とのコントラストが圧巻の「資源リサイクル」、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いレインボーブリッジが赤く染まった「アラート発令」と力作ぞろいでした。若い方の応募も目立つようになり、新鮮な視点で環境を切り取った写真が増えてきたと感じています。スマートフォン、SNSの普及で写真はより身近なものになりましたから、企業部門に加えて「大学生部門」が設置されたのは、とても良い試みだと思いました。

2022年優秀賞「コロナ終息祈願」本田和博さん
2022年佳作1「資源リサイクル」庵原邦寛さん
2022年佳作2「アラート発令」能登正俊さん

——「環境フォト・コンテスト2023」では、新たなテーマ「地球の色、暮らしの色」で作品を募集中です(応募締め切りは2022年8月12日)。

【広報本部】長く同じテーマでの募集を続けてきたことで、ややイメージが固定化された面もあると感じていました。過去の入賞作を手本としたモチーフや構図ではなく、あなたが出会ったその時、その場所ならではの色を捉え、環境と色彩に関する新たな視点を提示していただきたいと思います。写真はメッセージを直感的に伝え、受け取った人それぞれが自由に解釈できる、豊かな広がりを持つ表現方法です。当社では環境やサステナビリティに関する定量的な実績や目標などの公表とあわせて、例えばステークホルダー向けの広報誌『人、新しいこと、未来』に「コロナ終息祈願」を掲載するなど、入選作を「当社の環境への想いを伝える媒体」としても活用しています。

5つの視点からESG重視の経営を推進

——経営戦略の柱の一本に「サステナブル社会の実現に向けたESG重視の経営推進」を掲げています。

【広報本部】2021年8月、中期経営計画を初めて社外に向けて公表しました。ESGの取り組みは、当社グループを取り巻くサプライチェーン全体の課題だと認識しています。原材料調達から製品が廃棄されるまでを含めたライフサイクル全体にわたって、(1)ESG貢献製品の開発・売上促進(2)気候変動への取り組み(3)資源循環促進(4)社会貢献の一層の促進(5)コーポレートガバナンスへの一層の取り組み、この5つの視点で推進します。

「ESG貢献製品の開発・売上促進」は地球温暖化防止、資源循環促進、フードロス削減などの観点から、二次電池用部材、導電性部材、熱伝導性材料、バイオマス由来製品の開発などを積極的に進めています。「気候変動への取り組み」に関しては、省エネ対策として太陽光発電設備の設置、ボイラーの運用改善、生産機械の高効率化、照明器具のLED化を実施しました。また、再生可能エネルギーへの切り替えを進め、インターナルカーボンプライシングに関する社内整備にも着手。これらを気候関連財務情報開示タスクフォース(TCFD)の提言に沿って継続します。

3つのコア技術と社会ニーズのマッチングによるサステナブル社会への貢献

——「資源循環促進」の取り組みの中心は。

【広報本部】プラスチック製品の原材料のバイオマス化の加速、廃プラスチックの排出量抑制、リサイクルの促進です。そして「社会貢献の一層の促進」では、新管理システムの導入などによる適切な化学物質管理のほか、品質管理、責任ある原材料調達、そして輸送のロットアップや在庫拠点を集約することでサステナブルな物流業務の展開を図っています。5つ目の「コーポレートガバナンスへの一層の取り組み」は、単に法令やルールの順守にとどまるだけでは、実質的なガバナンスの向上にはつながらないと考えます。コンプライアンス徹底のための経営層からのメッセージ発信、従業員からのフィードバックなど、さらに風通しのよい組織づくりを目指して地道に成果を積み上げています。

私たちが日々の暮らしで接する色彩の中には、自然環境や社会環境の変化によって失われたり、変質したりするものがあります。長い時間をかけて紡いできた彩りのある豊かな環境を保全し、後世に伝えていくためにも、今を生きる私たちが責任を持って行動しなければと強く感じています。