オフィスカジュアルスタイルで通勤する女性
写真=iStock.com/maruco
2015年の創刊以来、キャリア女性たちのニーズに応える誌面づくりを進めてきたなかで、私たちは企業の「女性活躍推進」の知見を蓄積してきました。関係者の方々への取材を通してわかってきたことは、VUCAと呼ばれる環境激変の時代において、有能な知的人材の発掘が喫緊の課題であること、その人材戦略において企業が女性を適切に活用できないことは、人材戦略において不利益な状況をみずから作り出すことに直結する、ということでした。
「女性活躍推進」は、もはや抜き差しならないリアルで切実な経営課題なのです。

*VUCA(ブーカ:Volatility(変動性)・Uncertainty(不確実性)・Complexity(複雑性)・Ambiguity(曖昧性)は将来の予測が困難な状況を示す造語。

「両立制度を法定以上に整えているのに、女性たちが管理職になりたがらない」「男並みの覚悟がある女性なら昇進打診できるのだが」「両立中の女性に責任ある仕事を任せていいのか」

プレジデント ウーマン編集部では、働く女性のリアルな声を取材する一方、人事担当者や上司の方のこんな声も数多く聞いてまいりました。多くの企業が女性に対し、様々な両立制度や研修を入れて頑張っているのに、女性管理職は思うように増えない。私は両方の声に耳を傾けながら、「ずれ」や「すれ違い」を検証し、会社が提供する制度や研修の中身が、女性たちの本音や実態に響いていないのではないか、と考えてきました。

女性たちの思い込みや自己評価の低さに寄り添えない上司や経営陣が躍進を阻む

例えば、プレジデント ウーマン2022年春号に掲載した、男女管理職の意識を比較したデータでは、昇進意欲(図表①)や昇進直後の幸福度は男性の方が高くなっています(図表②)。しかしながら、昇進後の幸福度を見ると、女性の幸福度は役職が上に行くほど男性よりも高くなっています(図表②)。昇進したくなかった女性のほとんどは、上がってみると男性以上に幸福度が高いのです。さらに、子持ち女性管理職の幸福度は、子供がいない女性管理職より高いといったデータも出ています(図表③)。実は私は、プレジデント編集部に在籍していた10数年前から、この手のデータを扱ってきましたが、結果はいつも同じです。女性管理職の多くは、男性管理職や一般社員より遥かにプライベートも仕事も充実しているのです。

【図表1】管理職になりたかった?
【図表2】女性は役職があがるほど、幸福度が高まる傾向
【図表3】管理職:子育てしながらの管理職はツラい?

「管理職は滅私奉公させられてプライベートがなくなる」という女性たちの思い込みや自己効力感の低さ。そしてそこにうまく寄り添えない上司や、昭和的価値観から抜けられない経営陣とのすれ違いこそが、この国の女性躍進を阻む最大の問題だと私は考えております。このギャップを埋める教育によって、状況は劇的に改善されるはずです。定性、定量のデータをもとに、研修・講演を私と弊誌に登場する一流講師陣の方で提供させていただければと思います(講師陣例は以下をご覧ください)。

◆講師陣

白河桃子氏(昭和女子大学客員教授、相模女子大学大学院 特任教授、ジャーナリスト)

白河桃子氏

慶應義塾大学卒、中央大学ビジネススクールでMBA取得。住友商事、外資系などを経て、取材執筆講演活動。内閣官房「働き方改革実現会議」有識者議員などを歴任。著書に『御社の働き方改革、ここが間違ってます!』(PHP新書)、『働かないおじさんが御社をダメにする ミドル人材活躍のための処方箋』(PHP新書)など。

 

【参考記事】
女性たちが自然に管理職を目指したくなる会社は何が一番違うのか
昭和の男社会が愛する「暗黙知」がある限り、日本はますます世界に取り残される

【テーマ例】
・ダイバーシティ実現 女性活躍から働き方改革まで
・経営戦略としての働き方改革
・仕事、パートナー、出産、子育て、若年向けライフキャリア講座

佐藤博樹氏(中央大学ビジネススクール教授・東京大学名誉教授)

佐藤博樹氏

一橋大学大学院社会学研究科博士課程単位取得退学。法政大学経営学部教授、東京大学社会科学研究所教授などを経て現職。著書として、『人事管理入門(第4版)』(共著、日本経済新聞出版)、『職場のワーク・ライフ・バランス』(共著、日経文庫)、『新訂・介護離職から社員を守る』(共著、労働調査会)、『ダイバーシティ経営と人材活用』(共編著、東京大学出版会)、『働き方改革の基本』(共編著、中央経済社)、『多様な人材のマネジメント』(共著、中央経済社)など。

兼職として、内閣府・男女共同参画会議議員、内閣府・ワーク・ライフ・バランス推進官民トップ会議委員、経産省・新ダイバーシティ企業100選運営委員会委員長などを歴任。民間企業26社との共同研究である「ワーク・ライフ・バランス&多様性推進・研究プロジェクト」共同代表)など。

【参考記事】
女性たちが自然に管理職を目指したくなる会社は何が一番違うのか
なぜ「ワーママに優しい制度」をどんなに整えても、女性管理職は増えないのか

【テーマ例】
・両立支援から活躍支援へ:管理職の役割と働き方改革
・デュアルカップルのキャリア支援:男性の子育て参加が鍵
・多様な部下をマネジメントできる管理職の登用と育成
・残業削減から働き方改革へ:多様な人材の活躍の場の拡大を
・仕事と仕事以外の生活の境界管理:バウンダリーマネジメントの支援を

田中俊之氏(大妻女子大学人間関係学部准教授)

田中俊之氏

1975年生まれ。博士(社会学)。武蔵大学人文学部社会学科卒業、同大学大学院博士課程単位取得退学。社会学・男性学・キャリア教育論を主な研究分野とする。男性学の視点から男性と女性の生き方の見直しをすすめる論客として、各メディアで活躍中。著書に、『〈40男〉はなぜ嫌われるか』(イースト新書)、『男がつらいよ 絶望の時代の希望の男性学』(KADOKAWA)など。

【参考記事】
女性たちよ、管理職になれ!
少子化も女性管理職不足も「女性のせい」と考える人に欠けている視点

【テーマ例】
・女性活躍
・働き方改革
・ダイバーシティ&インクルージョン
・ハラスメント
・管理職ダイバーシティ
・役員、経営層ダイバーシティ

木下明子(プレジデント ウーマン編集長)

木下明子

1996年、早稲田大学第一文学部卒業後、プレジデント社入社。dancyu編集部配属。2003年に退社、ブリティッシュコロンビア大学アジア太平洋政策大学院(カナダ)に留学。2005年5月同大学院修了、6月よりプレジデント社に再入社し、プレジデント編集部配属。2013年よりプレジデント編集部副編集長。2017年プレジデント ウーマン副編集長、2018年1月より編集長就任。1児の母。中国語と英語に堪能。2021年、女性活躍に貢献した人に贈られるWOMAN’S VALUE AWARD(キャリア美人主催)受賞。

【参考記事】
家事も仕事も完璧主義を捨てなさい プレジデント ウーマン・木下明子編集長が語る女性のこれからの働き方

【テーマ例】
・女性管理職候補のための昇進意欲向上
・女性管理職のためのマネジメント
・仕事とライフイベントとの両立
・男性管理職向けダイバーシティマネジメント
・女性のためのスキルアップ

ロールモデルが乏しい中、女性たちの秘めた潜在能力を発掘できるかがカギ

私自身、両親が当時としては珍しい完全共稼ぎで、母は産後8週間で仕事復帰、近居していた祖母と、家事外注などの手を借りながら昇進していきました。ライフイベントを経てもキャリアを積むことが当たり前という家庭に育ったため、管理職になることに抵抗はありませんでした。しかし、今、企業で働いている女性たちのほとんどはそうではありません。男性と比べて家庭内にも企業内にもロールモデルが乏しい中で、女性たちの多くは男性よりも強い不安を抱えて働いています。自己評価は低くても潜在能力を秘めた女性たちが日本にはたくさん眠っているのです。

ご提案した資料のデータが示すように、女性躍進は今や平等論ではなく、すべての企業に不可欠な経営戦略です。未来にイノベーションを巻き起こす女性を一緒に育てていくお手伝いをさせていただければと思います。ぜひ、一緒に会社を変えていきましょう。

プレジデント ウーマン編集長 木下明子

 

 

図表①、図表②:プレジデント ウーマン2022年春号『昇進からお金、プライベートまで1300人「意識比較」大調査』より
図表③:プレジデント ウーマン2021年秋号『幸せな管理職たちの24時間のリアル2021大調査』 より