木下明子『図解! ダイバーシティの教科書』(プレジデント社)
「日本において女性の労働参加率が男性並みになれば、2030年までの労働力はほとんど減少しないと言われています。―中略―その意味でダイバーシティは、まさしく今後の日本経済の行く末を担う大切な戦略となっているのです」(「まえがき」より抜粋)
日本で唯一の女性向けビジネス誌『プレジデント ウーマン』編集長が、いままさに日本が直面する「ダイバーシティ」問題に真っ向から向き合い続けたひとつの回答がここにあります。
なぜ女性活躍推進が必要なのか、進まない理由は何なのか、ダイバーシティ経営とは究極、何なのか?

女性はなぜ管理職になった方が、仕事も人生も楽になれるのか?

「いったいどうやって大変そうな編集の仕事、しかも管理職をやりながら育児と両立しているんですか?」

ビジネス誌・『プレジデント』の副編集長に就任後、出産し、8カ月の産・育休後、時短ゼロでフルタイム復帰、その後『プレジデント ウーマン』の編集長になってから、本当に多くの方からこんな質問をたくさん受けてきました。私の答えはこうです。

「管理職の方が、体力的には楽だったから私は出産と、両立できたのです」

私自身は体力に自信がなかったため、若い頃から、正直、子供は別にいなくてもいいかなと思っていた一人です。実際、産前も産後も体はガリガリ、ぜい肉もない代わりに、筋肉もない。身長が高いので、「学生時代は体育会系でバスケットボールでもやっていたのですか?」なんて言われますが、実態は真逆で、運動神経は子供の時からゼロです(体育は中学の時の相対評価で、5段階で2でした)。

睡眠時間は、40代後半でも全然減らず、一日平均9時間は欲しいところです(一週間ではありませんよ)。しかも性格的に完璧主義とか根性があるとかからは程遠く、かなり神経質で、ちょっぴり怠け者体質と自負しております。まあまあ得意な家事は料理とお裁縫、ものすごく苦手な家事は掃除と洗濯と整理整頓(要するに掃除系全部ですね)。育児もあまり得意ではありません。

マネジメント中心の生活になったことで、時間的にも余裕ができた

そんな私が、出産を考えるようになったのは管理職になって時間的にも余裕ができたからです。もちろん会社の働き方改革の浸透や、両立制度の確立とその利用者の増加などの影響もありましたが、やはり現場を離れてマネジメント中心の生活になったことがとても大きかったと感じます。

妊娠中もものすごく体調が悪かったわけではありませんが、それでもつわりもそれなりにありましたし、眠気も出てくる。そんなとき「いつ私の体調が悪くなるかわからないから、振った仕事はなるべく早めにやっておいてくださいね」といえば、優秀な部下たちが動いてくれます。もちろん自分の仕事も、体調が良いなと感じたときに時間が空けば前倒しでどんどん進めておきました。けれど、自分が部下の状態でこういったことを上司に要求するのは極めて難しいものです。

自身の母親のほとんどが専業主婦である世代ゆえに……

私自身、母が高校の数学教師で、当時としてはものすごく珍しかった完全共稼ぎ家庭で育ち、女性が男性と同じようにキャリアを積み、育児や家事は必要に応じて祖母や人の手を借り、家計に貢献するのが当たり前の環境で育ちました。その意味でも心身ともにスーパーウーマンとは程遠くても、キャリアを積むことにそれなりに不安はあっても抵抗はありませんでした。

ただ、私の世代はほとんどのお母さんが専業主婦。今の働く女性たちは20代であっても、まだ大半がパート主婦のご家庭で育っています。

ゆえに、上司や人事からは「会社の中に、普通の女性がマネできるようなロールモデルがいない」「若い女性の昇進意欲がない」「女性たちの自己評価が低くて、昇進基準に達するような高い評価をつけにくい」「少し前まで男性ばかりの組織だったので女性のマネジメントの仕方がわからない」、そして、女性たちからも、「育休・時短をどのくらい取ったらいいかわからない」「管理職になったら、子供の学校の行事なんかにきちんと行けるのか不安になる」「社内の管理職が、とてもじゃないけどまねできないようなひと昔前のスーパーウーマンばかり」という声をよく聞いています。

データが証明!ダイバーシティ経営ができている会社は株式市場においても優勢

ダイバーシティは、いまや企業にとって最も大切な経営戦略です。「そんな理想論よりビジネスをきちんとやるべきだ」などと豪語する男性はいまだにいますが、ダイバーシティ経営ができている会社は業績においても株式市場においても高いパフォーマンスを上げていることは各種データによって証明済みです。そんなダイバーシティ、特に女性活躍関連のデータや制度、そして前述した私自身の両立メソッドが一冊の本にまとまりました。メディアとしての取材や調査で得た図版データをふんだんに取り入れ、ダイバーシティ経営を目指す企業の経営者や人事の方、女性部下を持つ上司の方々、そしてライフイベントと両立する方を含めた管理職前の女性と管理職女性まで、読んでいただける内容になっております。

就業者に占める管理職の女性割合(国際比較)
投資判断や業務において女性活躍情報を活用する理由
今後のキャリアについて、あなたの考え方に近いものは?

『図解! ダイバーシティの教科書』より抜粋

御社のダイバーシティ経営や女性活用を進めるうえで、スーパーウーマンとは程遠いのにそれでも10年近く管理職をやっている、私のキャリア温存メソッドや両立法、また管理職としてのマネジメント術などがお役に立つのであれば、ぜひ講演や研修などお気軽にお声がけください。