今年も3月15日に期限が訪れたが、確定申告に四苦八苦した人は多いはず。コロナ禍に見舞われて以来、副業を始めたり、フリーランス(個人事業主)に転じたりする人が増え、確定申告が今まで以上に切実な課題となっている。税制自体が慣れない人にはわかりにくい上、特にこれまで企業勤めでその処理を勤務先に任せっきりだった人などには、かなりハードルが高い作業だと言えそうだ。そこで、アンケート調査でその実態を検証しながら、お笑い芸人で元東京国税局職員のさんきゅう倉田さんに、簡単に確定申告を済ませるコツについて聞いた。

コロナ禍で個人の確定申告が急増中も、知識・情報の不足も深刻

働き方の多様化で、もはや多くの人たちにとって確定申告は“他人事”ではなくなってきている。日本におけるフリーランスの人口は2021年10月時点で1577万人と前年より48%も増加している(※1)。また、国税庁によれば、個人における2020年分の確定申告の数は前年比2.1%増となったとされ(※2)、こうしたフリーランスや副業という働き方の変化が影響しているようだ。

こうして確定申告の対象者が拡大しているものの、ほとんどの人たちの間ではそのために必要な知識や情報が不足しているのが現実だ。さんきゅう倉田さんは最初にこう指摘する。

「実は僕のようなお笑い芸人も個人事業者で確定申告が必要なのですが、身の回りではやっていない人のほうが多い。なぜなら、やり方がよくわからないし、誰も教えてくれないからです。その一方で、きちんと申告していなかった売れっ子の先輩が税務調査を受け、多額の納税を要求されて大変だったらしいといった話も耳にします。結局、芸人に限らず、多くの人が確定申告で困っているわけですね。だけど、それは無理もない話で、日本人は学校教育などでお金に関する知識を包括的に得る機会がなく、個人でインプットするしかないため、(お金や税金に関する知識の)格差も生じています。僕がお金や税金のことについて情報発信を行っているのも、困っている人がたくさん存在しているはずだと思ったからです」

さんきゅう倉田(さんきゅう・くらた)
お笑い芸人 ファイナンシャルプランナー
2008年に日本大学理工学部建築学科卒業後、国税専門官試験に合格して東京国税局に入局。中小法人や同族法人の税務調査などに携わった後、2010年に退職してNSC東京校に入学。吉本興業所属のお笑い芸人として活動しながら、SNSや講演などを通じて税金やお金に関する情報発信に取り組む。著書に『世界一やさしいお金の貯め方 増やし方』『元国税局芸人が教える 読めば必ず得する税金の話』など。

確定申告にかかる時間は平均752分!ストレスの原因は「事前準備」

アメリカン・エキスプレスが実施した最新のアンケートの結果からも、多くの人たちが確定申告に悪戦苦闘している様子がリアルに伝わってくる。これは、自分で確定申告を行っている個人事業主・副業者(全国20~69歳の男女)を対象とした調査だ(※3)

たとえば、「納税や確定申告にストレスを感じる」と答えた人は全体の32.2%で、「まあストレスを感じる」との回答と合わせると70%超に達している(図1)。また、確定申告におよそ752分もの時間を費やしているという結果も出ている。さらに、「確定申告時に大変だと思うこと」としては、43.8%の人が「源泉徴収票や領収書など、必要書類のとりまとめ」を挙げていた(図2)。

こうしたアンケート結果に対し、さんきゅう倉田さんは次のような感想を述べる。

「個人的には100%の人がストレスを感じていたとしても、けっして不思議ではないと思います(笑)。やはり、事前準備が面倒なことが確定申告という手続きのハードルを高くしているのでしょう。しかも、きちんと税金の仕組みや、事業をする上で何が経費で何が私的な支出になるのかなんて教わったことがないから、どのような書類が必要で、それらがすべて揃っているかどうかもピンとこない人が多いはず。送付されてくる源泉徴収票や支払い調書には特に説明書きも同封されていないし、取引先や副業先が複数に分かれていたら、手元に届くタイミングもまちまち。発行を義務づけられているわけではないので、送付してくれない会社もあります。さらに、領収書の整理などの作業をずっと後回しにしていて、申告期限が近づいてから一気に片付けてしまおうとすれば、負担感が増してしまうのは当然でしょう」

実際、「確定申告時の悩み」について尋ねた問いにも、57%以上の人が「申告書類の作成に時間をとられること」と回答している(図3)。

必要経費の仕分けや計上といった事前準備さえ済ませておけば、今はe-Tax(国税電子申告・納税システム)を利用すれば、申告書の作成や提出はオンラインで済ませられる。ところが、実際に同サービスを利用している人は44.7%で過半に達していないというアンケート結果が判明した(図4)。

そして、e-Taxの利点については「自宅でできる」(91.4%)が最多回答となったのに対し、難点として「システムが理解しづらい・使いづらい」(36.9%)、「事前準備に手間がかかる」(31.7%)を挙げた人が目立った(図5)。

「正直、過半数の人がe-Taxを利用していないというのは予想外の結果でした。申告に関してちゃんと教わっていない人たちにとって事前準備はかなり大変で、イチから自分で取り組むことは仕事量としても多くなってしまうのでしょう。事前準備に関する負担をもっと減らすことができれば、確定申告もさほど苦ではなくなりそうですし、e-Taxの普及も進んで作業時にかかる時間を節約できるでしょう」(さんきゅう倉田さん)

実践者の7割以上が「経費処理が楽になる」と答えるテクニックとは?

では、具体的にどのような手法を用いれば、事前準備を円滑に進められるのだろうか。それらの作業の中で最も手間がかかりがちなのは経費の仕分けで、公私のそれぞれで支払った領収書が混在していると、特にその作業は繁雑になる。

「東京国税局時代、僕は法人を担当していたのですが、個人の税務調査を手掛けていた元同僚の話によれば、ほとんどの人たちはプライベートと仕事で使うお金の財布が一緒になっているそうです。それぞれの支払いが入り乱れていたら、仕分けを行うだけでも大変な作業になります。そこで、最近は現金ではなくクレジットカードやQRコードで支払いをしている人も多いですから、支払いをする時点で公私を分け、明細書で記録を残すと管理がラクになるでしょう。ちなみに、僕自身はクレジットカードで使い分けを実践しています。クレジットカードなら、同じ財布の中に入れてあっても現金のように区別がつかなくなることもありませんし、使い分けるのも簡単ですから」(さんきゅう倉田さん)

つまり、さんきゅう倉田さんのように必要経費の決済は事業経費専用のクレジットカード、いわゆるビジネスカードに集約させれば、後で分類する手間から解放されるうえ、利用明細を見れば「いつ、どこで、何のためにいくらを支払ったのか」も明白だ。

「事業用の支出はビジネスカードに決済を一本化しておけば、税務署の職員もきちんと管理していることに好印象を抱きやすいですし、税務調査を実施した場合の手間も軽減されます。逆に公私が混同しているケースでは、税務調査にかかる時間もそれだけ長くなりがちです」(さんきゅう倉田さん)

現にアンケート調査の結果を見ても、ビジネスカードをすでに利用している人にそのメリットについて質問したところ、「経費処理が楽になる」が最多(60.2%)で、「プライベートとビジネスの区別ができる」(46.6%)がそれに次いだ(図6)。一方で、ビジネスカードを使わない理由として、クレジットカードで公私の支出を分けるメリットをそもそも知らない人が多いという事情があると見られる(図7)。

ビジネスカード利用者に「新しく事業を始める人にビジネスカードの作成を勧めるか」と聞いたところ、75%の人が勧めると回答している(図8)。やはり、ビジネスカードを使えばメリットを感じるものなのだ。

ビジネス専用のクレジットカードと言えば、個人事業主や事業を立ち上げてまだ日の浅い人は対象外などの先入観を抱くかもしれない。だが、アメリカン・エキスプレスのビジネス・カードは起業して間もない人にも門戸を開いているし、利用限度額の設定などに関しても一律の上限を設けておらず、フリーランスや小規模事業者を支援しているのも特徴的だ。

それは何より、アメリカン・エキスプレスが個人事業主や起業家、さらには副業者を決済面のみならず包括的にサポートしたいという姿勢の表れである。

2021年分の確定申告で疲れ果てたという人は、今からでもけっして遅くはない。お金の知識を学ぶ機会を増やし、ビジネス専用のカードを手に入れて、後回しにしない仕分けを直ちに実践しよう。

※1:ランサーズ株式会社「【ランサーズ】新・フリーランス実態調査 2021-2022年版
※2:国税庁「令和2年分の所得税等、消費税及び贈与税の確定申告状況等について
※3:「2022年度 確定申告に関する実態調査」調査概要
■実施時期:2022年2月7日(月)~2月9日(水)■調査手法:インターネット調査■調査対象:全国の自営業またはフリーランスで自身で確定申告をする男女計600人(事業年数4年以上:400人、事業年数4年未満:200人)★構成比(%)は小数点第2位以下を四捨五入しているため、合計しても100%にならない場合があります。