印刷・情報技術を基盤に、出版、包装、建材、エレクトロニクス、エネルギー分野、ライフサイエンス──。幅広い事業を展開する大日本印刷が目指す社会について、サステナビリティ推進部の鈴木由香さんが答えてくれた。

テーマを受け止める多様な感性。バラエティに富んだ写真が集まる

──「環境フォト・コンテスト」参加について、どのようなことを感じていますか。

【鈴木】大日本印刷(DNP)グループは多様なメディアにおいて高い品質のビジュアル表現に力を注ぐなかで、「写真」の力の大きさを実感してきました。写真プリント用の部材・サービスなどの事業も幅広く展開していますので、写真を通じて人々の環境への意識を喚起する「環境フォト・コンテスト」の取り組みは非常に有益であり、DNPグループの事業とも親和性が高いと感じています。

サステナビリティ推進部
ビジネス企画推進グループ
鈴木由香さん

──毎年、多くの作品が寄せられています。

【鈴木】人間を取り巻く自然環境において、地球を包み込む大気は非常に重要な役割を果たしています。生命が営みを続けていく上で欠かせない、そんな大気が見せてくれる刻々と移ろいゆく表情を、応募者一人一人の感性で受け止め、「うた」として表現してほしい。このような思いから、募集テーマを「大気のうた」といたしました。

テーマの性質から、やはりモチーフは自然の光景が多いですね。とはいえ、応募者の方々の解釈、切り口はさまざま。「大気のうた」という一つのテーマに対して、バラエティに富んだ、かつ質の高い作品を寄せてくださっています。単に「いい写真」を目指すのではなく、しっかりと作者の意図が表現されている。撮影の過程で真剣に自然と向き合い、地球環境のことを考えていらっしゃるのだろうと感じます。

──「環境フォト・コンテスト2021」の入賞作品は、どうご覧になりましたか。

【鈴木】優秀賞「明け渡る大地」は、明智光秀が城と町を築いた京都・福知山市の雄大な光景を、光と霧の演出によって描き出した一枚。歴史のロマンを感じさせると同時に「現代に生きる私たちに自然は何を語りかけているのか」と考えさせられました。佳作の「夏日」は、海と空の青と、雲や岩場の白との対比が面白く、自然の「視線」をも感じるようです。もう一点の佳作「メルヘンの唄」で雲、光、澄んだ空気が音楽を奏でているような光景には、ずっと眺めていたいと思わせる魅力があります。

2021年優秀賞「明け渡る大地」芦田千賀子さん
2021年佳作「夏日」安井健二郎さん
2021年佳作「メルヘンの唄」三浦奈津美さん

強みを生かし、人と社会をつなぎ、新たな価値を生む

──環境に対する取り組みについて教えてください。

【鈴木】当グループでは1972年、業界に先駆けて環境部を設立。独自の環境マネジメントシステムによる環境負荷の低減、環境配慮型の製品・サービス開発などに積極的に取り組んできました。行動規範の一つに「環境保全と持続可能な社会の実現」を掲げ、「DNPグループ環境方針」のもと、サプライチェーン全体に目を配りながら事業活動と地球環境の共生を進めています。

2015年に竣工した本社ビル周辺の一帯には、「市谷の杜」が元気に育っています。生物多様性に配慮した約6000㎡のこの森のイメージは「武蔵野の雑木林」。地域の多様な在来種で構成されています。社員が中心となって日々の管理を行っており、地域の方々も親しんでくれているようです。

本社(東京都新宿区市谷加賀町)周辺に広がる「市谷の杜」

──大切にしたいと思うのはどのようなことですか。

【鈴木】2020年3月に、「2050年のありたい姿」として「DNPグループ環境ビジョン2050」を策定。「脱炭素社会」「循環型社会」「自然共生社会」の実現を目指し、2050年までの自社事業活動による温室効果ガス排出量の実質ゼロ化、資源の効率的な利用と循環、生物多様性への影響の最小化と地域生態系との調和などに取り組んでいきます。

将来のありたい姿をはっきり描き、そこに今なすべきことをしっかり紐付けて事業を進めていくことが大切です。ただ、企業の力だけでは、この目標を達成するのは難しい。だからこそ国内外の企業や組織、また生活者の方々と対話を重ね、サステナブルな社会に必要な製品・サービスを生み出していく必要があります。私たちはこれを、「未来のあたりまえをつくる。」という言葉で表現しています。

持続可能な社会の実現に向けて、志を同じくする生活者の方々や企業とのコミュニケーションの場にもなっている「環境フォト・コンテスト」は、「仲間」を得る意味でも重要だと考えています。今後もグループ独自の強みである「P&I」(印刷と情報)を掛け合わせ、企業理念である「人と社会をつなぎ、新しい価値を提供する」という言葉のとおり、多くのパートナーと連携しながら社会課題の解決を目指します。