「内親王の結婚相手」に課された高いハードル

もちろん、小室さんが「母の婚約者には感謝している」「いま、眞子さまと婚約内定できたのも、婚約者の援助があったからである」という誠実な対応をみせないことが、結婚が好意的に受け止められない一因であることは間違いない。そういうところに不信感を持っているのだ、という人が多いのは理解できる。

ただ、眞子さまは結婚によって(現状の制度では)皇族ではなくなり、一国民、民間人になるにもかかわらず、祝福ムードからほど遠い。それは「内親王と結婚する男性は、やはり頼りがいのある、稼ぎのある、信頼できる、誠実な人が望ましい」という高いハードルを、私たちが無意識に課しているせいなのではないのか。もちろんそれは、「眞子さまに幸せになってほしい」と願う、親愛の気持ちの表れでもあるが。

男性版「シンデレラストーリー」は受け入れられるのか

小室さんの側から、この結婚ストーリーをみてみるとどうなるだろうか。

幼少時に父を亡くし、母は高い学費を工面して、プリンセスと同じ大学に入学することができた。「海の王子」に選ばれ、今度は本当のプリンセスと知り合うことができた。プロポーズをして、婚約内定。おかげで、アメリカに留学し、ニューヨークで弁護士資格試験を受け、就職先もみつけられた。そして結婚し、プリンセスとニューヨークに住む。

ある意味で、男性版「シンデレラストーリー」といった物語が作りあげられる。

しかしこれはあまり、好意的に受け入れられない物語である。女性が男性に見初められ、結婚によって地位上昇をはかる場合は純愛物語だが、男性が結婚によって地位上昇する物語は受け入れられにくいのだ。これだけのバッシングに耐えたことを、強い愛情と読み解くことも可能であるのに。

とりあえず、4年にわたる「婚約騒動」が幕引きを迎えそうなことに、ホッとしている。眞子さまはこれから、私たちが経験するような「普通の人生」を歩まれるのだろうか。結婚生活は山あり谷ありであるが、乗り越えられるのだろう。幸多きことをお祈りする。

千田 有紀(せんだ・ゆき)
武蔵大学社会学部教授

1968年生まれ。東京大学文学部社会学科卒業。東京外国語大学外国語学部准教授、コロンビア大学の客員研究員などを経て、武蔵大学社会学部教授。専門は現代社会学。家族、ジェンダー、セクシュアリティ、格差、サブカルチャーなど対象は多岐にわたる。著作は『日本型近代家族―どこから来てどこへ行くのか』、『女性学/男性学』、共著に『ジェンダー論をつかむ』など多数。ヤフー個人