音声の「閲覧性の低さ」をどう解消するか
【金子】強みとしては、日本独自のエンタメコンテンツがある気がします。
日本では声優さんがすごく人気があります。海外では声優さんって日本ほどの人気がありませんが、日本の声優は海外でも人気があったりします。「声優文化」があるというか、声に魅力を感じて、声にエンタメ性を持たせているところがあるので、これからはそこが日本独自の強みになっていくんじゃないでしょうか。
【緒方】ボイステック関連の海外企業で、気になるところはありますか。
【金子】やっぱりグーグルやアマゾンの動きは気になりますね。
【宮坂】僕はあえて言うならポッドキャストの分野かな。海外の方が、ポッドキャストのエコシステム(業種・業態を横断した協業で共存共栄していく仕組み)が進んでいますよね。
その中で目立つのはスポティファイです。ポッドキャスト関連の企業をたくさん買収して力を入れている。それ以外にも、新しいいろんな会社がポッドキャストエコシステムを作っていて、新しい体験を生み出しています。
例えば、音楽だと最初の3秒くらい聞けば好みの音楽かどうかがわかるけど、ポッドキャストは、結構聞かないとおもしろいかどうかがわからない。そういった、「閲覧性の低さ」みたいなものがあるわけですが、そこでAIとかを使って、自動的にポッドキャストのハイライトだけ切り取り、ニュースフィードのようにどんどん出してくれて、新しいポッドキャストを発見できるというアプリがあるんです。
僕は結構ポッドキャストを聞くんですけど、サブスクライブ(登録、フォロー)している番組があんまり増えないんですよ。新しいものをなかなか見つけにくい。そういうディスカバラビリティというか発見しやすさみたいなところに問題があると思ってたんです。でも、ちゃんとそこを解決してくれるテクノロジーやサービスが出てきている。エコシステムがリッチなんだなと思います。
「人と対話する」音声広告の世界
【八木】僕は広告屋なので、広告テクノロジーの会社が気になるんですが、シリコンバレーにInstreamatic(インストリーマティック)という、対話型音声広告を作っている企業があります。
音声広告を流した後、広告バナーが出せるような媒体なら、聴き手は興味があればクリックできますが、バナーが出せない場合は、音声広告を聴いても「こんなのがあるんだ」で終わってしまう。
対話型音声広告の場合は、音声広告を流した後、「はい」「いいえ」で答えられるような質問があるんです。例えば、コーヒーショップの音声広告の後に、「いいコーヒーがあるんですが、クーポンが欲しくないですか?」という質問が流れて、視聴者が「はい」か「いいえ」と音声で答える。すると、それを認識して、「はい」と言った人にはクーポンのURLを送ってきて、「いいえ」と答えた人には「そうですか。さようなら」と応答してくる。
今、ワイヤレスイヤホンを耳に挿しっぱなしの人が増えていますが、マイクがついていないものが多い。もしマイクがついているものが普及すれば、こういった体験もできるのでおもしろいですよね。