まずは世の中に出してみる

キングジムの事例の「カクミル」はAll or Nothing方式でした。社長からの「応援購入総額1000万円を達成したら商品化してもよい」という明確な目標を反映した形です。

もう一つのAll in方式は、目標金額に到達しなかったとしても、プロジェクト終了日までに集まった応援購入額を、手数料を除き獲得できます。そのため、達成・未達にかかわらず必ずサポーターへリターンを届けなくてはなりません。

こちらは目標を達成しなかったとしてもプロジェクトを実施できるため、すでにリターン製造の目処がたっており、お届けが可能な場合に有効です。現在のMakuakeのプロジェクトで用いられている多くはAll in方式です。

いずれの方法も一長一短ですが、結論としては「ユーザーに問うてみなければ実際のところはわからない」ということに尽きます。「社内」という世の中とは隔離された、狭い範囲の数人の会議で議論するだけでは見えないことは、数多くあります。付随する無駄をなくし、一旦世に出してみるというのは、特に「新しいものや体験」を生みたいのであれば必要なステップのはずです。

問われる担当者の熱意と本気度

ここで欠かせないのが、「旗をたて、やりたいことを宣言する」という姿勢です。旗をたてる人の熱意や本気が、周囲を巻き込んで動かしていきます。そこにMakuakeのような手段が加わることで、トライへのハードルはさらに下げられるのです。

Makuakeのプロジェクト実行者たちの姿を見ていると、「うまくいくか、いかないか」というテストに取り組んでいるというよりは、「うまくいかせる」という気概でいらっしゃるように感じます。

事例に挙げたキングジムの「カクミル」は、社員の東山慎司さんが企画したものでした。東山さんご自身も、プロジェクトが始まって以降はうまくいかせるために精力的に活動を続けていらっしゃったことを思い出します。

坊垣 佳奈(ぼうがき・かな)
株式会社マクアケ 共同創業者、取締役

同志社大学卒業後、2006年にサイバーエージェント入社。サイバー・バスほかゲーム子会社2社を経て、2013年マクアケの立ち上げに共同創業者・取締役として参画。主にキュレーター部門、広報プロモーション、流通販売連携関連の責任者として「アタラシイものや体験の応援購入サービス『Makuake』」事業拡大に従事。著書に『Makuake式「売れる」の新法則