情緒的価値を最大化することに成功したが…

知覚価値(コストパフォーマンス)は、機能的価値と情緒的価値に分けられます。機能的価値は、商品やサービスそのものが有する価値です。目に見える価値です。これに対し、情緒的価値とは、商品やサービスを利用することでもたらされる精神的な価値で、目に見えない満足感や充足感などの感情に訴えかける価値です。

あらゆる業界で日々技術が進展し次から次へと新商品が開発されていくような状況下では、品質がいいというのは当たり前で、機能的価値だけでは差別化は難しいと考えられています。これに対し、情緒的価値は、他社に真似されにくく価格競争に巻き込まれないため、利益率の高い商品を生み出せます。

スターバックスは、家でも職場でもない「サードプレイス」をコンセプトに、上質のコーヒーとマニュアルがなくパーソナルで心温まる接客サービスを中心に、座り心地がいい椅子や高級感ある内装で、居心地のいい空間を提供することを目指してきました。スターバックスは、スタバが提供する顧客体験に共感できる意識の高い人が集まる、少し値段が高いけど、オシャレで洗練された場所というイメージを構築し、多くの人を魅了してきました。この点でスターバックスは、情緒的価値を最大化する仕組みづくりに成功してきたといえます。

名古屋のスターバックスの店舗
写真=iStock.com/tupungato
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拡大戦略で増えた熱狂的ファンからの不満

しかし、スターバックスは拡大戦略を採り、多様なニーズを取り込むため豊富なメニューやドリンクのバリエーションを提供しました。特に季節ごとに販売される新作のフラペチーノは若者たちの間で注目の的となりました。その結果、幅広い客層を受け入れることになりました。都心に立地するスターバックスの店舗に関する口コミサイトでは「いつも混んでいる」「店内が騒がしい」「落ち着けない」という批判が多く見られます。居心地のいい雰囲気を求める意識が高いスターバックスの熱狂的なファンから見ると、サードプレイスというコンセプトを理解しないあまり品の良くない顧客層がそれを妨げていると感じるかもしれません。

知覚価値(コストパフォーマンス)は、知覚便益を知覚コストで割れば求められます。知覚コストとは、商品の購入などの金銭的コスト、並んで待つなどの時間コスト、ストレスなどの心理的コストです。スターバックスは、JCSI(日本版顧客満足度指数)調査の「知覚品質」という項目でも2014年からずっと1位です。顧客は、スターバックスのコーヒーやドリンクの味、接客サービスを評価していることがわかります。