システム導入の際の経営陣と現場のギャップとは
──DXの推進にあたり、企業はどんな課題を抱えていると感じますか。
【永田】今後、多くの企業が自社に必要なシステムを構築できなくなる。そうした事態が十分に起こり得ることは案外見過ごされています。IT人材の不足は相当に深刻で、2030年には需要の半分程度の供給に留まるかもしれないと経済産業省も予測している。これは、社会全体としてつくりたいシステムの半分しかつくれない可能性があることを意味しています。金融やエネルギー、物流といった社会インフラ系のシステムが優先されることを考えれば、一般企業の業務システムまでは手が回らない。“ひとり情シス”という言葉があるとおり、すでに社内エンジニアの確保が難しくなっている中、この状況を乗り越えられるかどうかが、実は国内企業の最大の課題だと感じます。
──解決に向け、何が求められますか。
【永田】結論から言えば、エンジニアに依存しない社内体制をつくることです。その実現にあたり、重要になるのは経営陣が自社の現場の業務フローをしっかり把握すること。多くの経営者は、システム投資にあたってその効果を重視します。しかし、現場の担当者は導入の方法や過程を心配する。これは決して抵抗しているわけではなく、システムが業務フローに合わなければ、自分たちの役割を果たせないという責任感からきています。
まずは、この経営陣と現場のギャップを解消しなければなりません。なぜならエンジニアに依存しない体制とは、つまり“現場アプローチ”で業務の改善や変革を進めていくということ。これがまさに私たちの考える「日本型DX」であり、実現するには現場の活動や思いを後押しする体制が何より大事です。
──DXを成功させるには、「経営トップが本気になる必要がある」としばしばいわれます。
【永田】そのとおりです。ただ、多くの場合、“何に本気になるべきか”がはっきりしない。それは、単にお金をかけてシステムを導入することではありません。重要なのは現場を正しく理解し、そこで業務フローを自ら改善、変革できる人材を育成することだと私たちは考えています。
例えば経理や労務、営業などの業務をRPAで自動化しようと思えば、その仕組みや言葉をわかっている人のほうが当然スムーズです。業務担当者とシステム担当者が分離していると、お互いの溝を埋めることから始めなければならず、多大なコミュニケーションコストがかかってしまいます。一方で、各現場には手作業で行われている業務が山ほどある。そうした中で経営者に求められるのは、各部門で自律的に動ける人材の育成にほかなりません。
システム構築と組織開発
この両輪をサポートできる
──貴社のRPA「ロボパットDX」は現場をどのように支援するのですか。
【永田】プログラミングの知識がない人でも感覚的に操作でき、業務を自動化できる。これがロボパットDXの開発コンセプトです。基本的にマウスとキーボードでできる操作は、すべて自動化が可能。人が自分の仕事をロボットに引き継いでいく感覚でご利用いただけます。一度作業を教えると、あとはデータ入力、帳票作成、データ収集、何でも自動でやってくれます。
今年3月の大幅アップデートでは、ウェブ上での業務を自動化する際のナビゲーション機能を加え、さらにウェブデータの取得スピードを飛躍的に向上させました。いまやどんな業種でも、ウェブやクラウドサービスを活用した業務が急拡大していますから、それに対応した形です。
──導入の効果や導入企業からの声について聞かせてください。
【永田】1年足らずで年間換算2万4000時間の業務削減を実現されたお客様もいらっしゃいます。多く見られるのは、あるご担当者がロボパットの使い方を習得され、社内で紹介することで効果が認知され、他の部門にも利用が広がっていくケースです。業務効率化の枠を超え、新たな企業文化が醸成されていく。「ロボパットを使うなら、最初から業務フローをこうしておこう」という発想が自然と生まれるようになったとのお話をよく聞きます。
──サポート面における特徴はありますか。
【永田】トライアル期間を設け、機能だけでなく、どうすれば業務改善につながるかという視点から活用法をレクチャーしています。もともと当社の母体であるFCEグループは、教育事業や企業研修、生産性向上のコンサルティングなどを手がける企業です。システム構築と組織開発、これを両輪としてお客様をサポートできることが他社にない強みです。
──ロボパットDXを通じて、どのような価値を提供していきたいか。あらためて聞かせてください。
【永田】人材価値の革新。一言でいえば、これを実現することが当社の大きな使命だと思っています。具体的には、生産性向上やイノベーション創出のノウハウを生み出せる人材の育成を支えることが私たちの役目。なぜなら事業環境の変化にともない、業務内容も刻々と変わっていく今の時代、それに“どう対応するか”を臨機応変に見いだせる人材を充実させていくことが勝ち残りの条件だからです。
当社のロボパットDXは、まさに“どうすればもっと業務を効率化できるか”と使う人の創造性を刺激するツールです。その特性を生かし、今後も現場から組織をトランスフォームできる人材づくりをバックアップしていきたい。そう考えています。