ここしばらく、コロナウイルスの影響で、外出自粛やリモートワークになり、自宅で過ごす時間が増えている。住空間の重要性を改めて実感している人も多いのではないだろうか。この機会に、これからの人生を過ごす住まいのあり方について、見直してみてはどうだろう。

「あなたにとって、理想的な住空間とは?」

こんな問いは、少し漠然としているだろうか。では、こう考えてみてはどうだろう。「自宅で過ごすとき、どんな気分でいたいか」「あなたにとって、居心地が良い、とはどんな状態か」。

住まいに何を求めるかは、世代やライフステージ、家族構成によって異なるのが当然だ。職業の特性や、個人個人の性格によっても変わるだろう。しかし、「快適性」「居心地の良さ」を求めない人はいないのではないか。つかみどころのない指標のようだが、いくつかの要素に分解することはできる。

まず、空間の輪郭を考えてみよう。われわれは家の「広さ」をつい「面積」で比べがちだが、空間は3次元で成り立つ。一般に、天井が高ければのびのびと開放的に感じられるし、低ければ落ち着いた雰囲気になる。ただし、面積と天井高のバランスも大切だ。ひとつながりの空間でも、天井に段差をつけることによって、居心地に変化を持たせることもできる。

内外をつなぐ日本の家の伝統を採り入れる

「家づくり」というと、間取りや動線など「内側」に目が向いてしまうが、家は、その周りにある街や自然と、内にある住空間を隔てる「境界」をつくるもの、と捉えることもできる。「居心地」を考えるうえで特に重要なのが、内外の境界であり接点でもある窓、開口部だ。

住空間(内側)にとって、窓は、換気、採光、眺望のとても重要な機能を持つ。一方、外側から見れば、窓は外観を印象づける大切な要素であり、夜間は窓を通して灯りが街並みに漏れ出す。また、内外の境界・接点として、プライバシーの制御や防犯性も大事な機能だ。

このうち、快適性や居心地の点では特に、換気(風通し)や採光(日差し)、眺望がポイントになるだろう。眺望を楽しむためには、外部からの視線を気にせずにすむことも大切だ。

日本の住まいには、開口部に「縁側」という内外のバッファゾーンを設け、軒を長く伸ばして日差しを調節する伝統がある。生活の洋風化や気密性・断熱性の課題から、一時は廃れそうにも思われたが、近年の住宅にも現代的なアレンジで採り入れられている。

昔ながらの掃き出し窓のような、内外のつながりを感じる大開口や、モダンなデザインで甦らせた軒の復権だ。背景には、サッシやガラスの高気密・高断熱化といったテクノロジーの進化と、日本の気候風土に合った家づくりの再評価がある。

面積では測れない、快適なボリュームの空間と、その空間を最大限に生かす開口部のつくり方、内外のつなぎ方。そこに、「居心地の良さ」をつくるヒントがあるのではないだろうか。自宅で過ごす時間が長いこの時期に、住まいのあり方について考えてみよう。