本気を出した金融庁
政府から「貯蓄から投資へ」のスローガンが発せられて久しいですが、日本人の現預金保有額は1千兆円規模にまで増大しています。これがすべてゼロ金利のまま退蔵されている現状を強烈な危機感で捉えた金融庁は、「貯蓄から資産形成へ」とフレーズを換えて、生活者が真っ当な投資行動を起こすよう本気で働きかけ始めています。
金融庁はなぜキャッチフレーズを「投資へ」から「資産形成へ」と換える必要があったのでしょうか。それはこの国において「投資」という言葉がネガティブワードであり、悪いイメージで定着してしまっているからです。要するに世間一般では「投資=資産形成の手段」とは理解されていないからなのです。
なぜ「投資」はネガティブイメージなのか
それでは、世間で思われている「投資」のイメージとはどんなものなのでしょうか。多くの人が株式投資と言えば、株を売ったり買ったりすることであり、相場で勝負することだと思っているのではないでしょうか。皆さんも、今すぐ値上がりする銘柄を当てて、値上がりしたらすぐに売却、これを繰り返しながら儲けを増やしていくのが投資の極意だと思っていませんか?
こうした行為は決して投資とは言えず、単なる取引です。そして目先の相場の値動きを予測して勝負するという考え方は、多分に投機的行為と換言できます。これら一連の行為は株式の短期売買にすぎず、リターンの源泉はもっぱら値動きです。実は日々の相場の値動きはプロでも当てることはできません。なぜなら短期的な価格の変動は市場参加者たちの買いたい、売りたいという感情や思惑の集積で動くものなので、合理的に予測することはできず、でたらめな上下の反復運動を繰り返しているものなのです。つまりそれを予測して勝負するのですから、そこに合理性は存在せず、ゆえに「投機」(ギャンブル)なのです。