「働きやすい環境」を続々と制度化
松本氏は、自身も介護経験を持ち、仕事との狭間で揺れ動いたことがある。それだけに、今後激増するであろう介護と仕事の問題にも敏感だ。
「超高齢社会においては、介護の問題と、世話をする人の仕事との両立の問題は増え続けるばかりでしょう。これは男性、女性どちらかに限った話ではありません。日本の社会全体が抱える大問題です。もし、介護を理由に従業員が会社を辞めなければならないなら、会社は貴重な労働力を失い、本人は仕事を失う。でもその時に、たとえば『半年間は介護に集中して、その後、可能な働き方を考えよう』『大丈夫。介護をしながらでも働けるよ』というような働き方のフォーマットがあれば、失うものを最小限に抑えられるはずです。家庭内での母や父という役割とLiBの社員という役割、あるいは、介護をする人という役割とLiBの社員という役割、それぞれどちらかを選んだらどちらかを捨てるという事がないようにしたいんです」
そうした会社からのメッセージが伝わるような配慮は、さまざまなちょっとした制度にも見て取れる。その1つが「ココイチ制度」。
「ここ一番の時に使える特別休暇のことなんです。子供の誕生日や結婚記念日、それから自分の誕生日に使っている社員もいますね。やはり、有給休暇というのはなかなか取りづらいというのが社員の中にはあります。でも、自分のために取得していいものなんですよというメッセージを伝えたいんです」
3カ月に1日は、全社で休む日も決めている。これも有給奨励の一環だ。
「3連休となる形にしていて、そこで気持ちを切り替えて走ろうということですね。だから『ピットイン休暇』という呼び方をしています」
子育て中の親にとってありがたいのが「三七五制度」。
「たとえば保育園に預けている子供が37.5℃を超える熱を出すと、園によっては預けられなくなってしまいます。だからもし、子供が37.5℃を超える熱を出したら、事前申請とか承認とかなしに、リモートワークに切り替えられるという制度です。『申し訳ありません。子供が熱を出しちゃいまして……』という罪悪感と共に会社に伝える必要がなく、『三七五発動します!』の一言で済む形にしています」
さらに社内にはキッズルームも完備している。
「だから、子供連れで出社するなどごく普通の光景になっています。パパやママが忙しくしていても、ほかの社員が相手をしていたり。ご近所関係が希薄になっているいま、そうした、持ちつ持たれつのコミュニティとして代替機能を果たすのは会社だと思うんです。子供も何回か会社に来ると『会社ってすごく楽しいね。いい人がたくさんいるね』となります。すると、それまで『ママ、会社に行かないで』と泣いていたような子供が、会社を好きになり、“働く”ということに対してポジティブに考え始める。教育の観点からもいいなと思えます」
社内には多様な働き方をする社員が多いため、社員同士がいかにうまくコミュニケーションを取れるようにするかにも気を配っている。
「入社したばかりの社員には『LiBz Academy』という制度があり、2週間集中して会社の考え方を学んでもらうとともに、『何を大事に働いているのか?』をディスカッションします。アカデミーには入学式があり、1カ月半後には卒業式がある。また、全社員が自分で自身の『取扱説明書』をまとめていて、誰もがそれを閲覧できるんです。たとえば『集中している時は、怖い顔になりますが、全然気にせず話しかけてください』といったことが書かれていたり(笑)」