時代も女性インストラクターを求める機運の高まりの端緒を迎えようとしていた。
「当時はまだ女性で自動車免許を取得しようとする人は少なく、教習所に通う男女比率で1~2割しかいませんでした。それが今や男女ほぼ半々です。そういう状況になることも見越していたわけです。とはいえ、女性インストラクターを採用するということは、業界内ばかりか、世間でも『大変なことが起きようとしている』と、センセーショナルな形で注目を集めましたから、当社の男性社員が驚いたのも無理のない話なんです。だから、社内的なコンセンサスを得て、女性インストラクターを受け入れるための協力体制を敷くことが最も苦労した部分であり、成功の秘密でもあったのです」
「おしゃれに、明るく、楽しく」
初めての女性インストラクターを迎えるにあたって、ハード面の整備も欠かせなかった。
「事務職の女性従業員はいましたが、インストラクターとしての女性従業員は初めてです。だからトイレ、ロッカー、休憩室を4校すべて(現在は5校)において整える必要がありました」
また、インストラクターとなるには資格も必要だ。
「インストラクターとして仕事をする、しない以前の問題として、国家試験に合格することが最初のテーマとなります。研修や受験対策をして、公安委員会が主催する試験に万全の態勢で臨んでもらわなければなりませんでした」
2019年2月1日現在、コヤマドライビングスクール全体で有資格者は510人いる。内訳は男性が364人、女性が146人。つまり30%近くまで女性インストラクターが増えてきたわけだ。また、その女性有資格者の中で係長は12人、30人以上の部下を持つ次長以上の管理職は6人、役員が1人いる。
これだけ女性インストラクターが根付いた背景には、自動車教習所のインストラクターならではの仕事の特性もあるようだ。
「業務の中身は男性と全く同じなんです。なぜなら、行政から運営指針が示されており、『こういう教習をしてください』というカリキュラムがきちんと決まっているから。そういう意味では、女性インストラクターを受け入れる側の男性上司も、女性も、経営側もやりやすさがあったといえます」
さらに同社にとって女性社員は、労働力以上の意味合いがあったこと。
「当社のサービス品質を上げる上で、女性の力が大きかったことは疑う余地がありません。自動車教習所は『教育業』の側面と『個人サービス業』の側面があります。人的、物的、ソフト的にレベルを上げないとお客様は来てくれません。そのレベルを上げるテコの1つとして女性の活躍があったと考えています」
たとえば、従来の自動車教習所につきまとっていた負のイメージの払拭にも女性インストラクターは一役買っている。
「おしゃれに、明るく、楽しく、という逆の発想をして、教習所らしくない教習所を作ろうというのが小山会長の根底にありました。まさしくそれを実現してきてくれたわけです」
たしかに、コヤマドライビングスクールの施設を訪れて驚かされるのは、その“おしゃれ”な雰囲気。開放感にあふれた吹き抜けは、現代風のカフェのようでもあり、美術館のような趣もあり、ライティングにも様々な工夫が施されている。そこは、スタイリッシュでありながら、伸び伸びゆったりとリラックスできるスペースになっているのだ。
「それに、女性がいると職場の雰囲気も明るくなります。また男性のみだと、どこか殺伐とした雰囲気になってしまうところが、女性が入ると全体に品がよくなりますね」