勉強しているのに英語力がまるで伸びない。自分の勉強法が正しいのか、疑問を感じている。そんな悩みを持つビジネスパーソンも多いのではないだろうか?カリスマ英語講師として絶大な人気を誇る関 正生先生に、挫折しないで英語学習を継続するための心得と、モチベーションが途切れない正しい勉強法についてうかがった。
関 正生(せき・まさお)
リクルート運営オンライン予備校
「スタディサプリ」「スタディサプリENGLISH」講師

1975年、東京生まれ。慶應義塾大学文学部(英米文学専攻)卒業。TOEIC® L&R Test 990点満点取得。『CNN ENGLISH EXPRESS』やNHKラジオ『基礎英語3』でコラム連載中。企業講演、社会人向けの各種セミナー、英語教材の監修ほか、活動は多岐にわたる。著書は『サバイバル英文法』(NHK出版)、『世界一わかりやすい授業』シリーズ(KADOKAWA)など75冊。

英語はすぐに結果が出ない。そのことをまず肝に命じよう

「こんなに勉強しているのに結果が出ない、と思っている英語学習者のほとんどは、実は学習時間が足りないんです。勉強すればすぐに結果が出るものと勘違いしている人が多いけれど、あなたが今やっている5倍、10倍は勉強しなければならない。英語はそんなにかんたんに身につくものじゃありませんよと、声を大にして言いたいですね」

そう語るのは、年間90万人以上を教えている人気英語講師、関 正生先生だ。長年、途中で挫折する学習者を数多く見てきた経験から語る、真実の言葉である。

「語学が短期間で伸びるわけはない、という覚悟を持って勉強すれば、心が折れることもありません。そのうえで、英語の基礎体力とでもいうべき単語力と、文法・リーディングの力を養うトレーニングを徹底的にやることが肝心です」

一般に日本人の英語力は、学校教育の土台の上に成り立っている。関先生によれば、基礎をつくるトレーニングは、「単語→文法・読解」の順で習う学校の英語学習を踏襲することが、日本人にとってはいちばん無理がない。リスニングとスピーキング、ライティングに取り組むのは、英語の基礎体力をしっかりと身につけた後でないと、「必ず壁に突き当たる」と関先生は強調する。

単語は反復学習が決め手。文法は大人の論理力を味方に

「英単語の暗記は筋トレのようなものです。毎日3回腹筋しても痩せないですよね。1日で100回なら効果がありますが、1カ月で100回腹筋しても効果はゼロ。英単語を覚えるのも同じで、『時間』と『回数』が決め手なんです。単語力のアップをめざすなら、通勤時間の利用はもちろん、電車やエレベータの待ち時間、コンビニのレジに並んでいる時間など、一日のスキマ時間はすべて単語に捧げる。それくらいの気持ちで、ひたすら反復学習に励んでください」

文法の学習について、関先生はラグビーにたとえる。子供なら100試合ラグビーを見れば自然とルールがわかるようになるが、大人にはその時間がない。したがって観戦する前に、あらかじめラグビーのルールを知っておく必要がある。

「子供になくて、われわれにある“大人の武器”は論理力。それを最大限に活かして学習できるのが、文法という英語のルールです。文法の理解はとても頭を使うので、脳の働きがいちばん活発な朝に勉強することをおすすめします」

「バランスよく」は逆効果。強化したい技能を絞り込む

基礎トレーニングで英語力の土台を固めたら、いよいよ次のステップである。近年、「読む・聞く・書く・話す」の英語4技能について、バランスよく学習することの重要性が盛んに言われているが、関先生はきっぱりと異論を唱える。

「英語を学ぶ目的と使わなければいけない場面によって、勉強の方法がまるで違ってきます。ビジネスパーソンの場合、海外出張とひと口に言っても、英語でプレゼンを行うのか、商談を進めるのか、雑談に応じられるようになりたいのかで、必要となる英語のスキルが違うわけです。キャリアアップをめざし、TOEIC® L&R Testのスコアを上げたいと考えているビジネスパーソンには、また違った勉強法が必要となります。あれもこれもバランスよく勉強するなんて、不可能だと思いませんか」

では、具体的にどのように英語4技能と向き合えばよいのか。最大のポイントは、ビジネスシーンで英語を使う場面を想定し、「読む・聞く・書く・話す」のうち、最優先で身につけるべき技能を一つに絞り込み、その技能のスキルアップをめざして勉強することだという。

「比較的得意と思える技能をまず伸ばすのも手です。結果が出やすいので、挫折しないで次のステップに進めると思います」と関先生は語る。

段階を踏んで学ぶことが「継続するコツ」

カリスマ英語講師がすすめる正しい勉強法について、あらためてポイントを整理しておこう。

「語学は短期間では伸びない」と覚悟を持って勉強に取り組む。

英語の基礎体力(単語力、文法・リーディング力)を、まず徹底的に鍛える。

英語を使う目的や場面を想定し、「読む・聞く・書く・話す」のうちで最優先すべき技能を一つに絞り込んで、段階を踏んで勉強する。

最後に関先生から、英語学習に励むビジネスパーソンへ、こんなメッセージをいただいた。

「趣味で漠然と勉強を続けても、英語はなかなか伸びないもの。その点、『仕事に絶対必要だから』と、義務として英語を必死に学べるビジネスパーソンは、ある意味でラッキーです。勉強しなければキャリアアップできない、これほど説得力のあるモチベーションはないのでは? 英語学習に終わりはありません。まずは基礎を固めるトレーニングを頑張ってください。多少発音が悪くても、単語力と文法力をしっかり身につけておくと、ネイティブの英語話者から、『この人は、きちんとした教育を受けてきた教養人だな』と信頼されます。一見地味に思える基礎学習が、将来のグローバルビジネスシーンで、必ずや活きてくるはずです」

英語の基礎体力をつくるトレーニングの順序

英語は目的によって必要なスキルが異なる。まずどんな英語にも通じる「基礎体力」を養おう。この順序で勉強するのがいちばん効率がいい!

(腰本文子=取材・文 小川 光=撮影)