どうすれば、社員の「残業時間」を減らすことができるか? 企業経営者にとって、頭の痛い問題だろう。とくに中小企業は、組織も人材も大企業に比べて脆弱なことから、実現は容易ではない。だが、やればできる! を実践した経営者がいる。「中小企業のカリスマ」といわれる武蔵野・小山昇社長だ。どうやって働き方改革を進めたか、ずばり明かそう――。
IT投資をケチらず、積極的に最新機種を取り入れる――。業務が効率化され、残業は激減、生産性も業績も格段にアップした!(※写真はイメージです 写真=iStock.com/Neustockimages)

決断へ背中を押した「人手不足」

「働き方改革」というのは他人事ではないな、と気づいたのは2014年ごろのことでした。14年4月に消費税が税率アップで5%から8%になりました。その増税分は公共事業に回って仕事が増え、そもそも少子高齢化で労働人口が減少していたから、働き手が足りないという状況になりました。

わが社でも仮に退職者が出ると簡単には補充が効かず、もし現有勢力でやるしかないとしたら、残った社員たちの負担は重くなる。これは大変だ。なんとか手段を講じなければならないと思いました。

だから「働き方改革」なんです。

2015年度の経営計画発表会で、私は「従業員の残業時間を減らし、月平均45時間未満を目指す」と申し上げました。「目指す」というのは中途半端な表現です。そんな言葉を使ったのはたしか20年ぶりでした。

私は超ワンマン経営者だから、ふつうは「やる」と断言します。ところがこのときはまだ自分の働き方改革、端的にいえば「時短作戦」に自信がなかった。それで「目指す」という消極的な言い方をしてしまったのです。

「45時間」としたのは、月45時間以上の残業は法令違反という判決が出ていたからです。法令違反の根拠は労働基準法第36条、いわゆる「36(サブロク)協定」。会社はこの協定を労働組合あるいは労働者の代表と結べば、社員に残業をさせることができます。ただし、無制限というわけにはいきません。その限度が月45時間とされたのです。

判例がある以上、協定を守らず社員に訴えられたら会社側は勝てません。会社にとっても無茶な残業をさせることは大きなリスクになると気が付いたのです。

また、新人を採るにしても、昨今は「給料が高い会社」よりも「休みの多い会社」のほうが人気ですから、いつまでも残業漬けの体制を続けていていいはずはないのです。

といっても、当時のわが社を振り返ると、平均の残業時間はおおよそ65時間に達していました。社内にはそれが当たり前という空気があり、社長の私自身も当然じゃないかと思っていました。だって、バリバリ働くのは当然だし、そもそも社員は残業代を含めた給料で生活設計をしていたわけです。社長から「残業をなくせ」と言われても、働くほうが困ってしまう。

では、どうしたらいいか。ひとつは、残業代を減らした分を賞与で補うような給与体系に変えるということ。もうひとつは、残業しなくても仕事をこなせるように生産性を上げるということです。