「即刻やるべきこと」は何か
とはいえ、労働人口が減少する今後は益々労働力確保が重要となり、労働力確保のためには個々の労働者が働きやすい職場を提供することが肝要であること、取引先が大企業である場合は特に、コンプライアンスの観点から法令違反のある企業との取引には慎重になることから、労基署の調査が入る前に自主的に改正法に沿うような体制を準備する必要があります。
では、何から準備すべきでしょうか?
第一としては、当然ですが法律の内容を知ることです。
働き方改革関連法案は、10項目程度にもわたる改正点を含むものですが、中でも影響が大きいと思われるものは、長時間労働の規制である上記の(1)「時間外労働の上限規制」、(2)月60時間超の時間外労働における特別割増の中小企業への適用を定める「割増賃金の猶予措置廃止」があげられると思います。
(1)については、時間外労働につき、法律上は上限規制がなかったものを、法律で上限を定めることになりました。
改正法では、原則として、残業時間は月45時間以内、かつ年360時間以内とされています。また、臨時的な特別の事情がある場合であっても、残業時間は休日労働を含んで月100時間未満、そして2カ月から6カ月の平均時間は80時間を超えないとされており、年間上限は720時間を超えないこととされています(ただし、この720時間は休日労働を含みません)。なお、月45時間というのは、一日2時間程度となっています。
また、(2)については、月60時間を超える時間外労働について、中小企業についても大企業と同様、割増率が50%となります。つまり、残業については、残業した分の時間給(100%の賃金)プラス25%の時間外割増賃金を支払うべきところ、60時間を超える部分に関しては、残業した分の時間給プラス50%の時間外割増賃金を支払わなければならなくなります。
第二としては、対策を考えることです。
上記の労働時間の上限規制については、直接的には、残業を命じる場合に締結が必要な労使協定である「36協定」の内容を見直ししなくてはいけません。この点、厚生労働省において、36協定の記載例を含め留意点などを掲示しておりますので確認の必要があります(注1)。