どんなケースが「アウト」なのか?
日本商工会議所・東京商工会議所は、1月9日、中小企業を対象に、「働き方改革関連法案」に対する認知度・準備状況などについての調査結果をまとめ、公表しました。
この調査によると、法律の内容について、「知らない」と回答した中小企業は「時間外労働の上限規制」で39.3%、「中小企業への月60時間超の割増賃金率の猶予措置廃止」が51.7%となっています。
また、法律がいつ施行されるかについても「知らない」と回答した中小企業は、「時間外労働の上限規制」で33.7%、「割増賃金の猶予措置廃止」が50.6%となっています。
上記「時間外労働の上限規制」「割増賃金の猶予措置廃止」のいずれも、違反については罰則規定があり、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金、が科されます。
このように、改正法違反は、刑事罰が予定されているほど重いものではありますが、実際どのような場合に刑事罰が科されるのでしょうか。
まず、違反事実が労働基準監督署に発覚する経緯はどのような場合があるかといいますと、定期監督という労働基準監督署(労基署)が自ら対象を選んで行う調査や、重大な労働災害が発生した場合に行う調査、従業員や退職者の労基署申告を契機に行う労基署の調査(申告監督)などにより発覚するケースがあります。
調査の結果、会社に法令違反が認められた場合は、是正勧告などの指導がなされますが、違反が重大・悪質な事案の場合は、検察庁に書類送検され、刑事罰が科されます。単なる法令違反というだけで刑事罰が科されることはまずないかと思いますが、指導にもかかわらず法令違反を繰り返しているような場合も重大・悪質な事案といえますので、やはり書類送検・刑事罰の可能性があります。
重大・悪質な事案として刑事罰が科された事例としては、最近では長時間労働が原因となって自死に至った新入社員に対する労災が認められた事案で企業に罰金50万円が科されたものがあります。
このように刑事罰は重大・悪質な場合に科されるものであり、1月11日に厚生労働省が公表した「労働基準監督官行動規範」にも、労働基準監督官が、中小企業の事情に配慮した対応をすることが定められていますので、単に「時間外労働の上限規制」違反、「割増賃金の猶予措置廃止」違反というだけでは刑事罰が課されることはないでしょう。