オフサイトミーティングの役割
スコラ・コンサルトがクライアント企業の言わば伴走者になりながら取り組んでいるが、オフサイトミーティングである。これまでにのべ千社を超えるクライアント企業で行ってきた。通常の会議と比べると、自分の役割や立場あるいはこれまでの常識を「オフ」するという意味あいで、「オフサイト」という言葉を使う。オフサイトミーティングをするうえでのポイントは、次の3つだ。
1)参加者が自分の思いをできるだけ、率直に話す
2)聞く側は、話す人の発言の背景にある事実や思いに関心を向ける
3)一緒に考えるプロセスを大事にし、結論を出すことを急がない
「話し合うアジェンダ(項目)は、あえて最初から明確にはしない。参加者ひとりひとりが問題意識などを事前にきれいに整理することなく、ありのままを話し合うことに深い意味がある。特に大切であるのは、互いに多様な考えや意見などを認め合い、自分たちで納得しながら論点をつくることだ。
これに対し、通常の会議は上位者が望んでいるようなゴールや進め方などを参加者が忖度し、それ通りに進めようとする。それで深い議論になるはずもなく、ひとりひとりがモヤモヤしたものを抱え込んだまま、終わることもある」(野口氏)
日本企業のあの重苦しい会議を見事に言い得ているように思えるが、野口氏は社員たちが自分たちでなんとか改善しようとしても、この状況から抜け出すことはなかなか難しいと見ている。
「長い期間の積み重ねを経て、現在の組織風土が出来上がっている。若い頃には上位者に不満を持ち、理不尽なものを感じても、いざ、自分が管理職になり、部下を持つと、かつての上司と同じような行動をとっている人もいる。しかも、そのことを無自覚にやってしまっている人が少なくない。本来は、部下から健全な批判を受けたならば、それを排除するのではなく、むしろ敬意を表するくらいのものが上位者にはほしい。
実は、事業会社で管理職だった頃の私も会議のあり方に苦慮した時期がある。あらためて当時を思い起こすと、社員が自分たちの手で会議のあり方を変えるのはつくづく難しい。だからこそ、プロセスデザイナーとしての立ち位置や豊富な知見を活かして、組織風土をクライアントと一緒に変えていく試みに全力を投じてきた」(野口氏)
会議のあり方を見つめ直すことは、ふだんの職場でのコミュニケーションの仕方を考え直すことである。さらには、上司と部下の関係、そのベースにある組織風土にまでメスを入れていくことも意味する。これが、スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーらの一貫した考えである。
「働き方改革」の議論にともない、生産性向上のやり方を知識だけで口にする識者などが目立つ。スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーは、安易にはそのことを語らない。生産性向上が、日本企業の現場ではいかに難しいことであるかを痛感しているからなのかもしれない。愚直と言えるほどに事実や実態と向き合いながら、クライアントと一緒に考え、動くところに、このコンサルタント集団の真骨頂があるように見える。