「議論が深まらない5つのワナ」
ただし、野口氏は自由に意見を言いやすい会議にすることができたとしても、状況いかんでは、しだいに予定調和で議論が深まらない会議になっている可能性があると捉えている。そのような状況に陥っていないか確認できるのが、次に挙げるチェックリストだ。会議に参加する複数の社員が使うことを想定し、作ったのだという。チェックしたところが多い項目がある場合、そこを意識して話し合うようにすると深い議論になっていくようになるという。
野口氏は議論が深まらなくなるときは、次に挙げる「5つのワナ」にはまっていることが考えられると指摘する。
結論があらかじめ決まっているので、議論をしても意味がない
(2)客観性のワナ
客観性のある意見のように見せて、実はリスクや責任を負いたくない
(3)受け手不在のワナ
意見を投げても、それをひろう人がいないので、話が前に進まない
(4)相互不可侵のワナ
お互いの考え方の違いを避けようとするから、論点が深まらない
(5)小手先さばきのワナ
いつもHOW(どのように)しか議論をしないため、抜本的な解決にはいたらない
ワナに陥り、議論が深まらない背景を分析する。
「会議の参加メンバーの中の上位者(管理職など)が過去の成功体験などをもとに、自分の考えがいかに正しいかを証明する場になっていることがある。多くのケースでは、部下の社員はそれを黙って聞くしかない。実は、ミドル層(中堅)以下にはこのような閉塞した状況を打ち破るエネルギーを持っている社員がいるのだが、会社としてその人たちの思いをくみ取ることができていない」(野口氏)
そのような思いが放置されたままにならないよう、ミドル層に個別にインタビューすることも少なくない。ただし、そこには見分けるべきポイントがあるという。
「思い込みなどによる批判やただの不満であるのか、それとも、具体的な事実にもとづく建設的な批判であるのか。これらを注意深く確認するようにしている。特に後者の場合は、組織の未来にとって欠かせない情報が少なくない。それらを、本人(ミドル層の社員)の承諾を得て、上位者や人事部などになんとかうまく伝えようとすることもある」(野口氏)
このときによく口にするのが、この言葉だ。
「彼らは単なる批判をしているのではなく、よりよい状況にするために、有用な考えを持っている。実は、(上位者と)同じ思いを持ち、同じ方向を見ている部分も少なくない」
この説明を受けると、上位者は会議の場でミドル層の意見に耳を傾ける姿勢に変わることもあるようだ。会議のあり方が変わるきっかけは案外シンプルなのかもしれない。