「働き方改革」が叫ばれるなか、労働生産性の向上に注目が集まってきた。具体的には非効率な会議が長時間労働の原因になっている場合が少なくない。日々会議に追われ、「会議がもっと効率化されれば早く帰ることができるのに」と思ったことはないだろうか。ダラダラ会議を止めて、「会議力」をアップする方法は何か。スコラ・コンサルトのプロセスデザイナーに聞いた。

会議の進め方、3つのレベル

働き方改革にともない、柔軟な働き方の重要性が浸透する一方、課題や問題点が浮き彫りになりつつある。その1つが、労働生産性の向上だ。例えば、長時間にわたり、議論をするものの、深い話し合いにならない会議が象徴的なものではないだろうか。

※写真はイメージです(写真=iStock.com/iryouchin)

今回は、生産性向上のカギとも言える「会議」をテーマにスコラ・コンサルトのパートナープロセスデザイナーである野口正明氏に取材をした。スコラ・コンサルトは、組織風土改革のパイオニアと言われる。パフォーマンスに大きな影響を及ぼす風土・体質に着眼し、クライアントと一緒に考え、組織のイノベーションを図ることで知られる。

野口氏は日本企業の会議の進め方として、大きく3段階(入門編、初級編、中級編)に分けて考えてみたらどうかと提案する。

会議の目的があいまいで、参加者の間でその意味でのコンセンサスがない場合は、まず入門編から。何のための会議であるかを心得ることなく、議論をするためにダラダラとした話し合いで終わってしまっては元も子もない。

「会議の目的は、少なくとも3つある。1つ目は情報共有、2つ目は意見やアイデアを出し合うこと。3つ目は、意見やアイデアを案として検討し、決めること。1~3のいずれに該当する会議であるのかを本来は参加者が理解したうえで始めるべきなのだが、十分にはできていない」(野口氏)

これができたら、次は初級編である。論点を明確にしたうえで議論し、一定の結論を導くことが特に日本企業は苦手だ。野口氏は「俗に言うダラダラ会議の多くは、このあたりのことができていないからだ」と話す。いわゆるロジカルシンキング的アプローチが大きな効果を発揮する領域がここだ。

中級編は少しハードルが上がるが、会議の4つ目の目的としての「創発」を提案する。参加者が日ごろの役割や立場を離れ、一人ひとりの個性や思いの違いを掛け合わせながら、より創造的な解を導くことを意味する。

野口氏は日本の大手企業に勤務した後、外資系企業で働いていた。その頃の経験をもとに言えば、アメリカ企業は効率的な会議運営は得意だが、「創発」的な会議は少ないようだ。

「私が勤務したアメリカ企業は、管理職や部下の役割や立場、権限と責任が日本企業より厳格であり、明確だった。したがって、互いに自由な発想でざっくばらんに話し合うことは難しかった。むしろ、役割などが柔軟と言える日本企業のほうが自由な発想で深い議論ができる下地はある」