兼業・副業推進に必要な抜本的な法改正
通勤途中の災害については、2005年の労災保険法改正で本業の勤務先から副業の勤務先へ移動する途中で事故にあった場合は通勤災害として認めることになった。じつは法改正の議論の際に労災保険給付の算定基礎となる給与をどうするかについて議論されたが、結果的に先送りにされてしまった経緯がある。
また、失業した時に手当が支給される雇用保険は週に20時間以上の雇用実態がある場合に適用される。だが失業給付を受けるには2社で就業していても1社でしか適用されない。もしかしたら社員の中には2社で働いていたのだから、副業の給与を含めた合計額が失業給付の給付日額の算定基礎になっていると誤解している人もいるかもしれない。
雇用保険にも入れない非正規労働者にとっても深刻だ。雇用保険は31日以上の雇用見込みがあり、週に20時間以上の雇用実態がある場合に適用される。1社では週20時間未満だが、2社の合計労働時間で加入要件を満たしても離職後に失業給付を受給できないのだ。これまで雇用保険の見直しは何度も行われてきたが、この点に関しては手付かずのままの状態である。
兼業・副業が容認されても働く人にとってはこれだけのリスクが放置されたままになっている。仮に副業を容認している企業であっても、こうしたリスクを社員に周知しているところはほとんどないのではないか。
いろいろなメリットがありますよと宣伝しても、いざというときに一番困るのは企業と社員である。政府が本気で兼業・副業を推進しようと思うのであれば抜本的な法改正を同時に行うべきだろう。