解決すべき労働時間管理と労災問題

だが、副業を容認している企業は少ないのが実態だ。中小企業庁の調査(兼業・副業に係る取組み実態調査、2014年)によれば兼業・副業を認めていない企業は85.3%と圧倒的多数を占める。多くの企業では就業規則に「許可なく他社の役員・従業員になることを禁じる」といった規定を設けている。

政府が兼業・副業を推進していくことは結構なことだが、現実には単にガイドラインやモデル就業規則の見直しだけではすまないリスクを抱えている。

兼業による機密漏洩の問題もさることながら労働時間管理や過労死などの労災問題など解決すべき課題も多いのだ。じつは2000年初頭の副業解禁の動きが進まなかった最大の障害はこの点にある。

たとえば、本業のA社とは別にB社の2社で働くことになった場合、労働時間を通算することが法律で定められている(労基法38条1項)。仮に副業を認めてもA社で法定労働時間の8時間働いた後、B社で働くことになればB社が超過分の割増賃金(残業代)を払わなくてはならなくなる。しかし、現状では残業代を払っている会社は皆無だろうし、B社に残業代を請求する人もいないだろう。A社も見て見ぬふりを決めこめば責任を回避できる。

だが、過重労働で過労死したらどうなるのか。労災保険の補償が受けられる過労死認定基準は月平均80時間を超えて働いていた事実などが要件になる。ところが2社の合計残業時間が80時間を超えていても認定されない。現状では1つの会社の労働時間でしか判断されない仕組みになっており、本人が亡くなっても労災認定を受けられず、残された本人の遺族は救済されないことになってしまう。

また、通常は労災事故に遭い、入院し、休職を余儀なくされた場合、病院にかかる療養補償給付や休職中の休業補償給付を受けることができる。だが、副業先のB社での事故が原因の場合、休業補償給付の給付基礎日額の算定はB社の給与のみで算定し、A社の給与は加味されない。

具体的な休業補償給付は平均賃金の6割、休業特別支給金の2割を加えて8割程度支給される。もしA社で30万円、B社で10万円の給与をもらっていたとしたら8万円しか休業給付をもらえない。仮に1カ月以上入院したら生活にも支障を来すことになる。