「今年こそ英会話をなんとかしたい!」、そう思い立った人に贈る英語マスターシリーズ。その第1回目は、NHKテレビ『おとなの基礎英語』でお馴染みの松本茂先生に指南していただく。TOEIC(R)L&R500点未満の初級者を対象に、「3」をキーワードにした学習法を紹介しよう。まずは「やる気にならない」「勉強法がわからない」「英語を使えるようになる気がしない」という心理面の「3大ない」を払しょくし、英語が使える基礎を築こう。

毎日3分間でいい英語にふれよう

松本 茂(まつもと・しげる)
立教大学教授
マサチューセッツ大学ディベートコーチ、東海大学教授などを経て、現在、立教大学経営学部国際経営学科教授、同学科バイリンガル・ビジネスリーダー・プログラム主査、同大学グローバル教育センター長。著作に『速読速聴・英単語』シリーズ(Z会)、『英会話が上手になる英文法』(NHK出版)など。

英語学習の成否のカギは、「モチベーションを保てるかどうかに尽きる」と松本先生。いかにしてモチベーションを維持し学習を継続するか、アドバイスをもらった。

「最初にクリアしてほしいのは、1日3分間、英語にふれること」

3分はカップ麺ができあがるまでのわずかな時間。学習を習慣化するためには、まず毎日3分間、英語にふれよう。

「1日3分、まず3日やってみる。それができたら、次は9日間、そしてさらに3週間と、伸ばしていく」

それも、「ながら学習」でかまわない。3分間、カップ麺ができるまでの間、英文テキストを音読するのでもいいし、ダイエットマシーンを使いながら英語を聞くのでもよし。音読するのであれば、一つの英文を3回読めばよしとする。

とにかく、1日3分間だとしても続けることが重要。「私は続けられている」「今回は三日坊主ではない」という気持ちを持つことが肝心だ。

「そして、学習を継続できるようになってきたら1日の学習時間も3分から9分、さらには15分と徐々に伸ばしましょう。『おとなの基礎英語』のドラマ部分は約2分、番組は10分間なので、ぜひ活用してほしい」

30秒間話せるようになる

会話テキストの英文を音読したら、次のステップに進もう。

「テキストの英文の一部を変えてみましょう。例文の主人公を自分に変えて自己紹介するなど、テキストを「自分化」すると、使える表現になります」

目指すのは、英語で30秒間話せるようになること。

「自己紹介では、仕事、好きなスポーツ、趣味など『3つのトピック』を盛り込めば30秒くらい話せるようになります。そして、相手からの質問も3つ想定して答えを用意しておけば、会話が成り立つようになります」

PICサイクルを確立しよう

さらにもうひとつの「3」が、松本先生が提案している「PICサイクル」の3要素。

P=Practice(個人学習)、I=Inter-action(対話的学習)、C=Communication(実践)を学習に取り入れること。

「まずはひとりで英語の学習を行い(P)、次に誰かと英語を使う練習をし(I)、最後は実際のコミュニケーションの場面で英語を使う(C)。自分に足りない部分があれば、またPに戻ってやり直すのです。大事なのはこのPICサイクルを日常的に回すことです」

つまり、「まずは、ひとりで学習したら、次に、英語学校の先生と、あるいはスカイプなどを使って外国の人と会話練習をする。英会話サークルで練習するのもいいですね」

対話的学習(I)の相手は日本人学習者でも問題ない。日本人がいると、英語を話すことをためらってしまう人がいるが、それでは上達は望めない。その心理的なバリアを取り除こう。そして、次は英語を実際の場面で使う。

「英語でツイートする、外国人の集まるカフェに出かけて会話する、職場の仲間とランチの間だけ英語を使う、海外旅行をするといった実践の場(C)も用意しましょう」

3文からスタートする

いくら練習しても実践の場で会話を続けるのは難しい。松本先生はこうアドバイスする。

相手の話を聞くばかりだと、段々話についていけなくなる。自分から話題をふり、会話の主導権を握ることが重要だ。

「『日本の若者の間では野球よりサッカーのほうが人気です』、と自分から発言する。そうすれば、返ってくる質問や意見も想定しやすく、会話が続きやすくなります」と松本先生。

発言は、「3文」でまとめてみる。例えば、(1)私は野球よりサッカーが好きです。(2)サッカーのほうがよりエキサイティングだからです。(3)好きな選手は本田圭佑です、のように。そして、最後に「What about you?(あなたはどうでしょうか?)」とつけ加えればオーケー。

このように3文を書き出して、何度も口頭練習する。そして、会話する相手を替えて、何度も言っているうちに会話もスムーズに運ぶようになる。「話せるトピックを増やしていくとよいですよ」と松本先生。

「3」をキーワードにした英語学習。これなら目標も定めやすく、今日からでも始められそうだ。さあ、まずは3分。「3大ない」という意識から脱出し、燦々と輝きましょう!!

(大竹 聡=取材・文 田里弐裸衣=撮影)