1棟目の投資で安定的な収益を確保し、2棟目、3棟目を購入していく。収益用不動産の仲介を専門とする水戸大家さんの顧客には、そうした人が多い。複数物件の賃貸経営を支えているのは、同社が提供する新鮮で質の高い物件情報や融資のサポートだ。代表を務める峯島忠昭社長に、支援内容の特徴や現在の投資環境などを聞いた。

良好なキャッシュフローがリスクへの対応力を高める

峯島忠昭(みねしま・ただあき)
株式会社水戸大家さん
代表取締役社長

「当社のセミナーや個別相談に訪れる方に共通する思いは、先行き不透明な経済情勢の中、個人として準備をしておきたいというものです。給与以外の収入源を確保しておきたい、子どもに資産を残したい、相続対策をしておきたい──。お客様には、ビジネスパーソン、会社経営者、公務員、医師などさまざまな職業の方がいらっしゃいます」と峯島社長は言う。

現在、賃貸経営に取り組む人の裾野は、資産家や地主以外にも大きく広がっている。とはいえ、実際に不動産投資を行うとなれば、相応の資金が必要となり、リスクと向き合うことも求められる。一歩踏み出すためには何が重要なのだろうか。

「当然のことではありますが、一言でいえば決断力です。自分の未来を変えたいと多くの方が頭では考えていますが、なかなか実現できません。それは決断ができないから。もう少しいえば、決断するための情報や知識が足りないからだと思います。だからこそ、私たちはまず具体的な情報やデータを提示することを大事にしています」

水戸大家さんが行うセミナーの主要なテーマは、“不動産投資でやってはいけないこと”だ。何より危機を回避し、失敗をしないことが持続的な経営には不可欠と考えているのである。

水戸大家さんが仲介を行った物件の例。全国の地場の不動産会社との緊密なネットワークにより、市場に公開される前の情報を入手。周辺と比較して優位性のある物件の確保を実現している。

また個別相談では、初めに相談者のビジョンを確認し、資産状況や家族構成などに適した投資戦略を練っていく。

「一口に賃貸経営といっても、年齢や勤務先、目標収益などによってやるべきことは大きく異なります。“あなたなら、こうしたことができます”ということをできるだけ詳細にお伝えするのが私たちの役割。それが決断の材料になると考えています」

そんな水戸大家さんがサポートしているのは、基本的にマンションやアパートの“1棟”への投資だ。理由は、投資初期から黒字経営ができる可能性が高いからである。不動産投資において利回りは大事な指標の一つだが、より着目すべきは利回りと借入金利の差であるイールドギャップ。これを見極め、プラスのキャッシュフローを確保することが重要、と峯島社長は言う。

「毎月しっかり手元にお金を残していくことは、リスクに対応する際にも重要です。修繕や空室、金利の上昇といった事態になったときも、資金の蓄えがあれば冷静に対応できる。余裕がないと、場合によって物件自体を手放すことにもなりかねません」

例えば1棟の総家賃収入が月100万円であれば、5割はローン返済に充て、固定資産税金や空室対策、修繕などのコストに2~3割を見ておく。そうして20万~30万円程度のキャッシュを確保するのが目指すべき形だ。

融資を受けられるかが賃貸経営のポイントに

賃貸経営において安定した収益を確保できるかどうか──。それを左右するのは、第一に立地や周辺環境、外観、設備といった物件の質の高さだ。そこで水戸大家さんでは、全国の地場の不動産会社に直接足を運び、緊密な関係性を築くことに力を注いでいる。それによって、まさに質の高い物件情報をいち早く入手することができるからだ。そして、その物件の仲介をしっかり実現することでさらに地場の不動産会社の信頼を獲得していく。そうした好循環が水戸大家さんの事業を支えている。

金融機関との信頼関係づくりについても同様だ。確かな実績を重ねることで全国的なネットワークを築いている。水戸大家さんを介せば、条件に合った金融機関を選べ、優遇金利で融資を受けられるケースもあるという。

「ここ最近は、少しずつ融資の条件が厳しくなってきています。融資が付くか、付かないかが、賃貸経営の最初の関門になってきているのです。ただし細かく見ていけば、金融機関や地域によって融資条件にはまだ格差がある。市場が変化する中でもネットワークを生かし、融資が受けられる金融機関を探し出すことが私たちの仕事だと考えています。一方で物件価格は低下傾向で、融資さえ受けられれば、よりよいキャッシュフローを実現できる環境も生まれている。この先、さらに融資条件が厳しくなる可能性があることを考えれば、現在は賃貸経営を考える人にとって非常に重要な時期といえます」

今のうちに手元にお金を残しながら運用の実績をつくり、信用力を高めておけば、景気が調整局面を迎えたときも、融資を受けながら安価な不動産を入手できる。逆に実績がない人は、融資を受けることができず、いい物件があっても購入できないというわけだ。

賃貸経営のほかに本業を持つ人が多い顧客のニーズに応え、水戸大家さんでは管理をサポートする体制も整えている。賃貸管理を行うグループ会社のMTKを設立し、メンテナンスやリフォーム、クレーム対応、保険業務のほか、入居者募集もサポート。仲介、管理、売却まで一貫したサービスを提供し、顧客に安心感を与えている。

賃貸経営もビジネスの一つ。確かな情報とそれを事業に生かす力が成否の鍵を握っている。そうした中で実践的なアドバイスと良質な情報が支持されている水戸大家さんは、注目すべき事業者の一つといえそうだ。