将来不安を解消するためには、資産運用は不可欠だが、投資で利益を得るには難しい環境が続いている。いま、どうすればいいのか、ファイナンシャル・プランナーの大竹のり子さんに聞いた。

大荒れの相場で資産形成をするには

エフピーウーマン代表取締役
大竹のり子

日本はデフレを脱し、インフレに向かいつつある。今後は、物価上昇に負けない資産運用が必要になるが、そう簡単ではなさそうだ。中国発の景気減速懸念によって、相場の乱高下が続き、個人投資家が手を出しにくい状態が続いている。

エフピーウーマン代表取締役でファイナンシャル・プランナーの大竹のり子さんはこうアドバイスする。

「先行きが不透明で、予測が難しいときには、長期でコツコツ投資をしていくのが王道です」

そもそも短期で大きな利益を出すのはプロでも難しい。それは個人投資家がどれほど勉強や情報収集をしても、成功の確度を上げるのは簡単ではないということを意味している。

であれば、時間分散や投資対象の分散などを実践して、リスクを抑えながら長期で小さな利益を積み重ねていくのが賢明ということだ。

それでも投資である限りは、リスクをゼロにすることはできない。中には、“リスクがあるなら、投資はしたくない”と考える人もいるだろう。しかし、大竹さんは「何もしないことこそリスク」と指摘する。

アベノミクス以降、株価は上昇し、企業業績も改善が続いている。ところが、個人の懐具合はどうか。給料はなかなか上がらず、景気回復の実感が得にくい状況ではないだろうか。

「将来不安は消えないままに、数字上の景気だけが良くなっている状態です」

これは、構造的な問題だという。国の財政赤字や高齢化などが根底にあるから、目先の経済政策では解決できない。結局、20年後、30年後は、いまよりも、さらに厳しい状況に陥っている可能性もある。

「投資によるリスクももちろんありますが、老後資金が足りないというリスクのほうが致命的ではないでしょうか」

このままでは、将来必要となる資金が足りないことが明白であるにも関わらず、それを放置することは、投資によって資産額が変動するリスクよりもはるかに大きいリスクなのではないか。現役時代にはそれなりの収入があったにも関わらず、リタイア後に貧困に陥ってしまう「下流老人」が問題化しつつあるが、今後はますます深刻な状況になりかねない。
今後は、投資を「するか、しないか」ではなく、投資が必要であることを大前提として、いかにリスクを抑えて実践するかを考えるべきだということになる。

値動きの幅が心地よい投資商品を見極める

具体的には、どうすればよいのか。
「投資で成功するためには、投資商品との相性も重要です。まずは、自分に合う商品は何かを見極める必要があります」

例えば、投資商品は種類によっておおよその値動きの幅が異なる。それが自分の想定よりも大きければ不安になるし、小さければ物足りなさを感じる。いずれの場合も本来得られるはずの利益を逃してしまいかねない。自分にとって心地よい値動きの商品を探すことが重要というわけだ。

実際の投資商品としては、大きく分けると株式、投資信託、不動産がある。自分に合っているかどうかを見極めるための特徴をここで紹介しよう。

株式は、取引所が開いている間は、刻々と変わる時価で取引ができるため、ダイナミックな値動きを体験できる。しかし、値動きを左右するのは、その企業の業績だけではない。世界同時株安など、市場全体の相場環境の影響も受けるので、意図せず値動きが大きくなる可能性がある。“投資をすること自体が楽しい”という人にはよいが、手間をかけずに安定運用をしたい、という人には難しい商品ともいえる。