私は大学で、グローバル教育センター長を務めています。同センターで、海外インターンシップ希望者の面接をすると、幼少のころから学校以外の活動を、興味を持って自分から進んでやってきた学生に自立心の強さを感じます。

ボランティア活動や国際交流活動など、いつも見知った同級生とは異なる子供や大人と接すると、不測の事態もあるだろうし、思い通りにならないことも多いでしょう。彼らは、そういう体験を通して、課題対応力や自立心を育んできたのだと思われます。

子供が学校以外で多様な人と接することは、人格形成のうえで重要な体験です。英語学習と関連づければ、英語のサマーキャンプやインターナショナルスクールのイベントなど、外国人や英語と触れ合える体験は、言語や異文化への関心を呼び起こす良い機会になるかもしれません。

流暢に英語を話せることより、
自分の考えを的確に伝える英語力を

「英語を始めるのは何歳から」といったラインはないと、私は思います。子供の発達も性格も十人十色。早ければ早いほど良いとはかぎりませんし、子供が英語に興味を持ち、楽しいと思わなければ長続きしません。

英語の学習スタイルも、歌やゲームのレッスンが好きな子もいれば、体を動かすより英語の絵本を読むのが好きだという子もいます。学習法も無理強いは禁物。英語に対する興味の示し方をよく見て、その子に合った学習スタイルを選ぶことが大切です。

私が所属する経営学部の国際経営学科では、経営学を日本語と英語で学びます。しかし、そこで重視する英語力は、正しい文法や発音より、自分の考えを的確かつ論理的に相手に伝えられる力です。この力を高めるには、「日本語で学ぶ」内容と「英語で学ぶ」内容がリンクしていることが好ましいと考えます。

つまり、子供でも実生活にかかわる身近なことを英語で言ったり、自分が知っている童話などを読むと良いでしょう。さらに語彙量は考える力と深く関係するので、単語を覚えるだけではなく、その使い方を一緒に学ぶことが大切です。子供向けの英語教室などに通い、日常的に英語を「使う」ことが英語の習得に有効だと思います。

Profile
松本 茂●まつもと・しげる
立教大学経営学部国際経営学科教授、グローバル教育センター長。1955年、東京都出身。マサチューセッツ大学ディベート・コーチ、神田外語大学助教授、東海大学教授などを経て、2006年より現職。専門はコミュニケーション教育学。NHK「おとなの基礎英語」の講師としてもおなじみ。また、日本ディベート協会の専務理事も務めるなど、日本語ならびに英語によるディベート活動の普及にも力を注いでいる。著書に『英語ディベート 理論と実践』(玉川大学出版部)、『英会話が上手になる英文法』(NHK出版)など多数。

(高橋盛男=インタビュー・文 中林 香=撮影)