今の小学生が社会に出るころ、グローバル化はさらに進み、英語で話せることは必須となる。しかし、グローバル人材に求められるのは、英語力ばかりではないともよく言われる。国際社会で活躍できるようになるには、何が必要なのか。立教大学教授・立教大学グローバル教育センター長で、テレビの英語番組でもおなじみの松本茂さんにたずねた。
グローバル化社会で求められるのは、
不測の事態に対応する力
グローバル化とは、異質なものが一緒になること。多国籍化、多人種化が進み、異なった生活文化やものの考え方と接する機会が、日常的になっていくことを意味します。
そのような社会において英語を話せないと、英語圏の人たちには知識、能力がないと映りがちですから、社会に出るまでに一定の英語力を養っておくことはとても大切です。
しかし、今でもそうですが、グローバル人材に求められる能力は、単に英語力だけではありません。多様な文化が交わる社会では、予想がつかないようなできごとが、頻繁に起こります。
例えば、業種が同じでも、日本と海外との商習慣の違いで、取引がつまずくというようなことはよくあります。ですから、英語力にも増して、グローバル人材に求められるのは、実はこうした不測の事態に対応していく力なのです。
情報の収集とそれを分析する力、多角的にものを見る目、そして相手と対等にわたり合えるだけの論理性と自立心。そういった素養がないまま社会に出てしまっては、たとえ英語が上手に話せたとしても、厳しい国際社会をわたり歩いていくことはできないでしょう。
しかし、大学生を見ていても思うのですが、最近はこの不測の事態に対応する力の弱い子が多くなっているようです。その背景には、失敗しないように育てられてきたことが、一因としてあるのではないかと私は思います。
外国人も含む多様な世代の人々と
一緒に活動する体験が大切
最近の子育てでは、早期教育への関心が高い一方で、子供の失敗をおそれる親が増えているとも感じます。
子供に恥ずかしい思いをさせたくない。そんな親心からかもしれません。幼稚園や学校で縄跳びができないと困るからと、あらかじめ縄跳び教室に通わせる。そんなふうに、子供の意志とはかかわりなく、親が先回りしてさまざまな用意をしてしまうことが少なくないようです。
しかし、子供は失敗から学ぶことも多いのです。失敗体験が少ないと、失敗を避けて自発的な行動をとれない子になるおそれがあります。それでは将来、グローバルに活躍できるような個性は育ちません。
国際社会は実のところ、失敗が避けられない世界です。失敗を避けることより、その失敗をどう分析し、新たな対応をするかが問われるのです。では、どうすれば課題対応力が高く、自立心の強い子に育てられるでしょう。