──専門の知識がないと、難しいようにも思います。
【森】簡単ではありませんが、できることはたくさんあります。例えば、物件を建てるエリアの人口の増減や男女比率、年齢別人口、また最寄り駅の乗降客数などは、インターネットでもある程度調べられる。大家さんになるならば、これくらいはチェックしてほしいですね。そうした情報から、入居者像を絞り込んでいきます。
入居者は、主に次の3つのバランスから住む部屋を決めていきます。「家賃」「場所」「間取り(広さ・設備)」。オーナーは入居者目線に立ち、同じ要素からターゲット層を浮かび上がらせていくわけです。そうして入居者像にマッチした部屋づくりを考える。これは専門の事業者との共同作業となります。
──では、パートナーとなる事業者はどのように選ぶのがよいでしょうか。
【森】よく聞かれる質問です。一つには、オーナー側の小さな相談や細かい依頼に真摯に応えてくれるかどうか。事業者も当然ビジネスですから、業務の効率性を重視します。となると、既定の枠組みの中で話を進めたいというところがあるでしょう。それを抑え、個別の要望にきちんと対応してくれるかどうかは見極めのポイントになります。
一方、事業者の担当者にこまめに動いてもらうためには、オーナー側にも、ねぎらいの声をかけるなどしながら、円滑なコミュニケーションをとっていくことが求められます。そこはやはり、人対人のやりとりですから。また、成功している大家さんは、単に要望をぶつけるだけでなく、セミナーなどで自身もよく勉強しています。そうした姿勢が事業者にも伝わるのです。
ビジネスの醍醐味を
味わってほしい
──入居者目線を大事にし、事業者としっかり連携する。あと注意する点は何かありますか。
【森】はじめに長期的視点の重要性についてお話ししましたが、将来を想定し、それを事業計画にきちんと落とし込んでいくことがやはり重要です。家賃相場や入居者ニーズなどは、当然時とともに変化しますから、最大限厳しく見積もっておく必要があるでしょう。また、修繕費や設備交換などの費用、税金関係などは案外見落としがち。とにかく事業収支のシミュレーションは、あらゆる角度から、綿密に何度も行うことです。
失敗している人の大半は、そこが非常に甘い。最初のうちは返済計画がうまくいっているものだから、家賃収入をクルマや旅行などに使ってしまったり。ところが年月を経てくると、修繕費がかかるし、リフォームも必要になるわけです。
──最後に、これから賃貸経営に挑戦しようという方にアドバイスを。
【森】賃貸経営はビジネスですから、努力が報われる世界でもあります。ターゲットを決めて、どうしたら結果が出るか、必死で考える。仮に条件が悪くても、それを逆手にとって打開していく。そこが面白いところです。
例えばアパートの部屋は、通常2階から埋まっていきますが、アイデアで1階から入居者が決まるような物件に仕上げていく。実際、そうした取り組みをされているオーナーさんもいらっしゃいます。基本的にどんな立地でも、どんな物件でも、どんな部屋でも何かしらのニーズがある、というのが私の考え。そこをとことん掘り下げる。これが賃貸経営の醍醐味です。